著者
岡崎 敏雄 Toshio OKAZAKI
出版者
国立国語研究所
雑誌
日本語科学
巻号頁・発行日
no.4, pp.74-98, 1998-10

筑波大学外国人年少者に対する日本語教育への本格的取り組みは近年開始されたばかりである。現場の教師は手探りでこれに当たり,その中で言語教育観が形成されつつある。本研究は,形成されつつある教師の言語教育観に焦点を当て,日本語教育が必要な金国の外国人年少者の在籍する公立小・中学校の日本語教育に関わる全教師に対して質問紙による言語教育観の調査を行った。クラスター分析,分散分析の結果,全体として(日本語教育と共に)母語保持を重視する言語教育観が教師によって高く支持され,カナダのイマージョン・プログラムに典型的に見られる継続的二言語併用型の言語教育観が形成されつつあることが示された。しかしながら他方,日本の諸条件を反映して,同時に「少数散在型」「受容型」「滞在エンジョイ型」「短期滞在者への注目型」「現行制度枠内型」という性格を備えたものであることが示され,教育制度の異なるカナダのイマージョン・プログラムでの継続的二言語併行型言語教育との相違も明らかにされた。