著者
津田 みわ Tsuda Miwa
出版者
日本貿易振興機構アジア経済研究所
雑誌
アフリカレポート
巻号頁・発行日
vol.52, pp.64-77, 2014

2011年10月のケニア国軍による南部ソマリアへの越境攻撃開始後、ケニアではアッシャバーブの報復攻撃とみられるテロが多発している。そのケニアで、2014年6月、ソマリア国境に近いンペケトニと呼ばれる一帯において大規模な住民襲撃事件が発生した。アッシャバーブがすぐに犯行声明を出したものの、ケニアのケニヤッタ大統領はアッシャバーブの犯行を否定し、「特定コミュニティを標的にしたエスニック・バイオレンス」だとの見解を表明した。ンペケトニ事件は、「悪化するテロ対ケニア政府による治安強化」というこれまでの図式に、いかなる波紋を投じたものだったのだろうか。本稿では、このンペケトニ事件を整理し、ケニア政府側の対応を追いながら、ンペケトニ周辺の土地問題と民族的分布との関係、与野党対立の現状、そしてケニアのインド洋沿岸を舞台に今も続く分離主義運動を中心に事件の背景を探り、今後の影響を考察する。