- 著者
-
森田 明夫
UCAS II研究者グループ
- 出版者
- 日本脳神経外科コングレス
- 雑誌
- 脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
- 巻号頁・発行日
- vol.20, no.7, pp.484-490, 2011-07-20 (Released:2017-06-02)
- 参考文献数
- 13
- 被引用文献数
-
16
10
目的:未破裂脳動脈瘤は無症候性疾患であり,治療合併症を最小限に抑える努力が必要である.日本における未破裂脳動脈瘤治療の詳細なデータを得るべくUCAS IIを開始した.中間成績を示す.方法:2006年に31施設からオンラインで前向き登録された1,059例を対象とした.登録時,3ヵ月,12ヵ月,60ヵ月の経過観察登録の予定である.全症例の詳細な画像データ,各登録時の生活の質(SF-8,SF-36,EQ5D),治療前後の高次脳機能(MMSE),診療開始後1年間の総治療費を計測している.結果:治療は558例に施行され,開頭術81%,血管内治療19%であった.重篤な合併症はmodified Rankin scale 2ポイント以上の低下が25例(4.5%)に認められ,MMSEの24以下への低下を含めると5.3%であった.治療予後はサイズ,部位,クモ膜下出血既往により有意に影響された.SF-8,SF-36,EQ5Dで測定された生活の質は術前後に大きな変化は認められなかった,治療に要する費用は1年間で約200万円であり,血管内治療が有意に高額であった.結語:日本における未破裂脳動脈瘤の治療成績はおおむね良好である.しかし大型動脈瘤や椎骨脳底動脈瘤の治療成績はいまだ不良であり,今後さらなる治療技術の向上およびリスクコミュニケーションの改善が必要である.