著者
内山 幹生 ウチヤマ ミキオ Uchiyama Mikio
出版者
学習院大学
雑誌
学習院史学 (ISSN:02861658)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.95-113, 2005-03

本稿では、地底銭の発生・概念・運用者その歴史的背景について考察する。現在、地底銭という文言の記載された文書は、地方史料の数点をあげるのみで、藩庁の行政文書においては未確認であり、史料的制約は免れない。もっとも、宇土郡不知火町所蔵『御新地方記録』には、比較的多くの地底銭文言がみられる。同書は、天保期より嘉永五年(一八五二)までの郡浦(こおのうら)手永管内・亀尾村を中心とする干拓新田の村々、周辺古村の動向を記録した村方の文書綴りで、三八〇丁からなり、藩政末期の干拓新田村草創の状況が克明に記されている。この文書を中心にして検討してみる。