著者
Usio N 中田 和義 川井 唯史 北野 聡
出版者
日本陸水学会
雑誌
陸水学雑誌 (ISSN:00215104)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.471-482, 2007 (Released:2008-12-31)
参考文献数
56
被引用文献数
20 20

2006年2月1日,北米原産のシグナルザリガニPacifastacus leniusculus(ウチダザリガニ,タンカイザリガニ)が特定外来生物の第二次指定種に選定された。本報では,特定外来生物の将来的な管理計画を念頭に置き,シグナルザリガニの国内での分布と防除の現状を報告する。シグナルザリガニは,1926年から1930年にかけて北米のコロンビア川流域から輸入された後,北海道や本州の天然水域に移植され,近年,急速に北海道はもとより本州でも分布を拡大している。2007年7月現在,シグナルザリガニは,北海道の東部,北部および中央部の地域,そして本州の3県(福島県,長野県,滋賀県)に分布している。外来生物法の施行以降,これまで北海道でのみシグナルザリガニの防除が行われ,2006年度には4湖沼,2007年度には河川を含む4水域においてカゴ罠やSCUBA器具を用いた素手による防除が実施されている。一方,滋賀県今津町では,個体群独自の標準和名(タンカイザリガニ)を重んじてシグナルザリガニを保護しようとする動きがある。最後に,シグナルザリガニ防除の問題点や今後の課題について議論する。