著者
多田 正和 伊藤 邦夫 齋藤 稔 森 也寸志 福桝 純平 中田 和義
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会論文集 (ISSN:18822789)
巻号頁・発行日
vol.87, no.2, pp.I_179-I_187, 2019 (Released:2019-07-19)
参考文献数
16

ナゴヤダルマガエルの越冬場所に影響を及ぼす環境要因の解明を目的として, 岡山県倉敷市内で本種が高密度に生息する地区の慣行水田と休耕田の各1筆で野外調査を実施した.その結果, 越冬個体の大半(35個体中34個体)が休耕田で確認された.越冬個体の在/不在(1/0)を目的変数, 各コドラートのカバー率・草高・土壌pH・体積含水率・間隙率・土壌硬度を説明変数として一般化線形モデル(GLM)により解析した結果, 土壌硬度・カバー率・草高の二乗項が最良モデルで選択され, 土壌硬度には有意な負の効果が認められた.水田で本種の越冬場所を創出する上では, 土壌硬度と田面の植物の存在が重要になると考えられた.
著者
Usio N 中田 和義 川井 唯史 北野 聡
出版者
日本陸水学会
雑誌
陸水学雑誌 (ISSN:00215104)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.471-482, 2007 (Released:2008-12-31)
参考文献数
56
被引用文献数
20 20

2006年2月1日,北米原産のシグナルザリガニPacifastacus leniusculus(ウチダザリガニ,タンカイザリガニ)が特定外来生物の第二次指定種に選定された。本報では,特定外来生物の将来的な管理計画を念頭に置き,シグナルザリガニの国内での分布と防除の現状を報告する。シグナルザリガニは,1926年から1930年にかけて北米のコロンビア川流域から輸入された後,北海道や本州の天然水域に移植され,近年,急速に北海道はもとより本州でも分布を拡大している。2007年7月現在,シグナルザリガニは,北海道の東部,北部および中央部の地域,そして本州の3県(福島県,長野県,滋賀県)に分布している。外来生物法の施行以降,これまで北海道でのみシグナルザリガニの防除が行われ,2006年度には4湖沼,2007年度には河川を含む4水域においてカゴ罠やSCUBA器具を用いた素手による防除が実施されている。一方,滋賀県今津町では,個体群独自の標準和名(タンカイザリガニ)を重んじてシグナルザリガニを保護しようとする動きがある。最後に,シグナルザリガニ防除の問題点や今後の課題について議論する。
著者
水井 颯麻 Quang-Tuong Luong 勝原 光希 中田 和義
出版者
日本甲殻類学会
雑誌
CANCER (ISSN:09181989)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.19-27, 2023-08-01 (Released:2023-09-06)
参考文献数
30

We conducted laboratory experiments to examine the predation effects on larvae of two Japanese native dragonfly species by the North American invasive crayfish Procambarus clarkii. We put a larval individual of either Trigomphus interruptus or Coenagrionidae spp. in experimental aquaria, and after 24 hours we added an individual of P. clarkii of two different body size groups; small size group: total length (TL)<50 mm and large size group: TL>60 mm. After seven days, we observed whether the larval individuals of the dragonflies survived or not. We confirmed the severe predation on both of the two taxa of dragonfly larvae by P. clarkii. In T. interruptus, the survival rate was significantly lower compared to the control group (i.e., no crayfish) both in the small and large size groups. In Coenagrionidae spp., the survival rate of larvae in the small size group was significantly lower than the control group. In the large size group of P. clarkii, predation on the dragonfly larvae was also observed, but there was no significant difference compared to the control group. These results indicate that P. clarkii especially in small size can have a marked negative effect on dragonfly larvae through severe predation, if P. clarkii invades the habitats of dragonfly larvae.
著者
熊川 真二 中田 和義 川井 唯史
出版者
日本ベントス学会
雑誌
日本ベントス学会誌 (ISSN:1345112X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.26-32, 2011-10-15 (Released:2012-10-11)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

Official documents and archives suggest that the alien crayfish Pacifastacus leniusculus (Dana, 1852) was introduced into Japan from North America on five occasions from 1926 to 1930, and populations have survived in Hokkaido, Nagano, and Shiga Prefectures. The chemical conditions and biological environment of an established habitat near their original a release point in Akashina, Azumino City, Nagano Prefecture, were surveyed on four occasions in 1998 and 1999. Water quality (pH, DO, BOD) and WT were recorded seasonally at each of eight stations, and crayfish and other aquatic macro-organisms were collected. Some predatory fishes (Oncorhynchus mykiss, Anguilla japonica, and Lepomis macrochirus) that might actively eat juveniles of P. leniusculus were recorded. Individual density of P. leniusculus was relatively low compared to its other habitats in Japan. Only 52 crayfish were collected during this study, on 19 of 32 sampling occasions (eight sites, four times each). The shape of the acumen and the species composition of ectosymbiotic crayfish worms (Annelida: Clitellata: Branchiobdellidae) can be used as tools to trace the origin of introduced of P. leniusculus in Japan. The present crayfish from Nagano Prefecture have a relatively short acumen, different from those of specimens from Shiga and Hokkaido Prefectures. Furthermore, the crayfish worm Xironogiton victoriensis occurs only on crayfish from Akashina, Nagano Prefecture. The dates of introduction of P. leniusculus in Nagano (1926, 1929) also differ from those for Hokkaido (1930) and Shiga Prefecture (1926). These findings suggest that the regional population of P. leniusculus in Nagano has a different origin than those in Shiga and Hokkaido, having originated from crayfish that were introduced independently from North America.
著者
牛見 悠奈 宮武 優太 筒井 直昭 坂本 竜哉 中田 和義
出版者
応用生態工学会
雑誌
応用生態工学 (ISSN:13443755)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.79-86, 2015-12-28 (Released:2016-02-01)
参考文献数
18
被引用文献数
8 5

北米産外来種のアメリカザリガニは,在来生物の捕食などを通じて,在来生態系に深刻な影響を及ぼしている。 また,本種が掘る巣穴が水田漏水の原因になるなど水田管理上の問題も引き起こしている。このため,本種は緊急対策外来種と日本の侵略的外来種ワースト 100 に指定され,効率的な駆除手法の開発が求められている。 そこで本研究では,水田水域や河川・湖沼等に定着したアメリカザリガニの駆除に用いる人工巣穴の適したサイズを明らかにすることを目的として,本種による人工巣穴サイズ選好性実験を実施した。灰色の直管型の塩ビ管を人工巣穴とし,内径と長さの異なる人工巣穴をアメリカザリガニに室内水槽内で選択させた。その結果,人工巣穴の内径については,全長(X, mm)と好んで選択された内径(Y, mm)の間に Y=0.58X+4.26 という有意な回帰式が得られた。人工巣穴の長さについては,全長の 4 倍の長さの巣穴が好んで選択された。以上の結果をもとに,アメリカザリガニの駆除に用いる体サイズ別の人工巣穴サイズを提案した。
著者
白石 理佳 牛見 悠奈 中田 和義
出版者
応用生態工学会
雑誌
応用生態工学 (ISSN:13443755)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.115-125, 2015-12-28 (Released:2016-02-01)
参考文献数
21
被引用文献数
8 4

在来生態系への影響が問題となっている緊急対策外来種のアメリカザリガニを効率的に捕獲駆除できる篭および篭に用いる餌の種類を明らかにすることを目的とし,岡山市半田山植物園内の池で,篭の種類によるアメリカザリガニの捕獲効率比較実験(実験1)と篭に用いる餌の種類によるアメリカザリガニの捕獲効率比較実験(実験2)を行った.実験1 では,アナゴ篭,カニ篭,エビ篭を用いて,篭の種類別に本種の捕獲個体数を比較した.実験2 では,練り餌,チーズかまぼこ,冷凍ザリガニをエビ篭に用いて,餌の種類別に本種の捕獲個体数を比較した.実験1 の結果,アメリカザリガニはエビ篭で最も多く捕獲された.またエビ篭では,カニ篭とアナゴ篭に比べ,小型個体から大型個体までを含む幅広い体サイズのアメリカザリガニが捕獲された.実験2の結果では,練り餌を用いた場合で捕獲個体数が最大となった.以上,実験1と2 の結果から,アメリカザリガニの駆除を効率的に行うには,練り餌を餌としてエビ篭を用いるのが良いと結論した.
著者
塩出 雄亮 中田 和義
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.203-208, 2017-09-20 (Released:2018-09-20)
参考文献数
17

観賞魚の“楊貴妃メダカ”は,朱赤色のミナミメダカの変異体である。楊貴妃メダカの発色メカニズムを解明するため,鱗の色素胞,体内のカロテノイドの定量,カロテノイドを含む飼料による体色変化について,楊貴妃メダカとヒメダカを比較し検討した。体表の色素胞は,楊貴妃メダカ,ヒメダカともに黄色素胞が主体で,黒色素胞はほとんど存在しなかった。一方,黄色素胞内の色素顆粒は楊貴妃メダカが橙赤色で,ヒメダカは淡黄色であった。アスタキサンチン,ゼアキサンチン,ルテインの濃度は楊貴妃メダカがヒメダカよりも高く,とりわけアスタキサンチンは楊貴妃メダカがヒメダカの10倍以上高かった。アスタキサンチンを添加した飼料を給餌したところ,楊貴妃メダカ,ヒメダカともに頭頂部の色相値が有意に低下した。これらの結果は,楊貴妃メダカの朱赤色はカロテノイドと関連があること,カロテノイドの摂取により赤みが強くなることを示している。
著者
中田 和義
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究の目的は,希少種を含む在来生物に対して深刻な悪影響を与えるとともに,巣穴を掘って水田漏水を引き起こすなどの農業被害をもたらしている外来種アメリカザリガニについて,効率的な管理・駆除手法を検討することである。アメリカザリガニは,環境省と農林水産省によって2015年に公表された「生態系被害防止外来種リスト」で,緊急対策外来種に選定されており,被害が生じている水域では早急な駆除対策が求められている。令和元年度の研究では,平成30年度の研究においてアメリカザリガニが掘る巣穴長が長くなると水田漏水が発生する可能性が高くなると考えられた結果をふまえて,本種が巣穴を掘削できる土壌硬度の限界値を明らかにすることを目的とした室内実験を行った。この実験では,ワグネルポットに水田土壌を満たして土壌硬度の異なる模擬耕盤層を作製し,アメリカザリガニが巣穴を掘削できるかを観察した。模擬耕盤層の土壌硬度については,1 mm刻みで4~9 mm(計6実験区)となるように調整した。本実験によって得られた主要な結果は以下のとおりである。1)アメリカザリガニは土壌硬度7 mm以下の模擬耕盤層には巣穴を掘削できた。2)土壌硬度4 mm以下では,アメリカザリガニは模擬耕盤層内に長い巣穴を掘り進めることができた。3)土壌硬度8 mm以上の模擬耕盤層では,アメリカザリガニは巣穴を掘削できなかった。以上の研究成果については,現場の水田管理においてアメリカザリガニの巣穴による水田漏水対策を検討するうえで有用な知見になると考えられる。
著者
塩出 雄亮 中田 和義
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.203-208, 2017

観賞魚の"楊貴妃メダカ"は,朱赤色のミナミメダカの変異体である。楊貴妃メダカの発色メカニズムを解明するため,鱗の色素胞,体内のカロテノイドの定量,カロテノイドを含む飼料による体色変化について,楊貴妃メダカとヒメダカを比較し検討した。体表の色素胞は,楊貴妃メダカ,ヒメダカともに黄色素胞が主体で,黒色素胞はほとんど存在しなかった。一方,黄色素胞内の色素顆粒は楊貴妃メダカが橙赤色で,ヒメダカは淡黄色であった。アスタキサンチン,ゼアキサンチン,ルテインの濃度は楊貴妃メダカがヒメダカよりも高く,とりわけアスタキサンチンは楊貴妃メダカがヒメダカの10倍以上高かった。アスタキサンチンを添加した飼料を給餌したところ,楊貴妃メダカ,ヒメダカともに頭頂部の色相値が有意に低下した。これらの結果は,楊貴妃メダカの朱赤色はカロテノイドと関連があること,カロテノイドの摂取により赤みが強くなることを示している。
著者
塩出 雄亮 中田 和義
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.82, no.4, pp.628-630, 2016

<p> 観賞魚の"幹之メダカ"は,背部の光沢のある青い体色を特徴とするミナミメダカの自然変異体である。幹之メダカの背部体表色を解明するため,電子顕微鏡を用いた組織学的検討を行った。幹之メダカでは真皮深層に規則的に重層配列した反射小板を含む虹色素胞を認めた。一方,野生型メダカでは虹色素胞は確認できなかった。幹之メダカの金属様光沢は虹色素胞によるものであることが確認できた。また,規則的な反射小板の配列が青色の構造色を発現していることが示唆された。</p>
著者
中田 和義 和田 信大 荒木 晶 浜野 龍夫
出版者
水産増殖談話会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.263-274, 2005-09-20
参考文献数
35
被引用文献数
3

テナガエビ類を効果的に採集できるエビ篭の構造と使用人工餌料について検討するため、1)エビ篭に入れた人工藻体、2)エビ篭の入り口の直径、3)エビ篭に用いる人工餌料がテナガエビ類の採集効率に及ぼす効果を調べる野外実験を実施した。エビ篭に人工藻体を入れ、篭の内部をテナガエビ類の隠れ場所に似せても、採集個体数は変わらなかった。一方、エビ篭の入り口の直径は採集個体数に大きく影響し、採集効率は直径40~50mmで最適であったが、40mmは50mmよりもモクズガニの混獲を防ぐ効果が高かった。人工餌料の実験では、餌料1(ウナギ育成用配合飼料)、餌料2(餌料1にイカ内臓ソリュブル吸着飼料とオキアミエキスを混ぜた餌料)ともに冷凍サンマと同等の採集効果を期待できた。以上の結果から、テナガエビ類の採集では、入り口の直径を40mmとしたエビ篭に、常温での長期保存が可能で、餌料2よりも安価な餌料1を用いる方法が良いと結論づけた。これらの条件を伴うエビ篭と、市販のカニ篭(餌料は冷凍サンマ)を用いて、8河川4湖沼で採集比較実験を行ったところ、テナガエビ類はエビ篭のみで採集され、エビ篭はテナガエビ類の採集に有効であることが示された。また、このエビ篭は他のエビ類やザリガニ類に対しても採集効果が高かった。
著者
中田 和義 永野 優季 大橋 慎平 河合 俊郎 大高 明史
出版者
日本ベントス学会
雑誌
日本ベントス学会誌 (ISSN:1345112X)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.90-94, 2014-12-31 (Released:2016-02-06)
参考文献数
24

In Lake Akan, Hokkaido, northern Japan, the local population of the native and endangered Japanese crayfish Cambaroides japonicus (De Haan, 1841) is extinct, whereas the signal crayfish Pacifastacus leniusculus (Dana, 1852), an invasive species from North America, has become established and rapidly increased. This study provides information about specimens of C. japonicus preserved by Dr. Saburo Hatta from the lake in 1872. The six specimens (two males and four non-ovigerous females) are valuable evidence of C. japonicus formerly inhabiting Lake Akan. The body sizes of the specimens were 24.4–29.5 mm in carapace length and 55.7–67.4 mm in total length, and the estimated age of the largest specimen was ten years, indicating that Lake Akan of that time provided a suitable habitat. Twenty-two ectosymbiotic crayfish worms (Annelida, Clitellata, Branchiobdellida) were found attached to the specimens. Three branchiobdellidan species were identified: Cirrodrilus cirratus Pierantoni, 1905, C. inukaii (Yamaguchi, 1934) and C. megalodentatus (Yamaguchi, 1934). This is the first record of the latter two species from Lake Akan.
著者
中田 和義 中岡 利泰 五嶋 聖治
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.72, no.3, pp.447-449, 2006 (Released:2006-06-07)
参考文献数
19
被引用文献数
3 2

移入種ブラウントラウトの捕食による在来生物に対する影響を調べるため,北海道日高支庁の豊似湖でブラウントラウト 3 尾を捕獲し,胃内容物を観察した。その結果,3 尾中 2 尾の胃内容物から,水産庁と環境省からそれぞれ危急種と絶滅危惧II類に指定されているニホンザリガニが発見された。1 尾あたりのブラウントラウトの胃内容物からは,1~4 個体のニホンザリガニが確認され,ブラウントラウトがニホンザリガニの個体群に及ぼす影響は強いと考えられた。潜在的な定着域においては,他の淡水産甲殻類に対する捕食の影響が危惧される。