著者
三谷 曜子 V Burkanov R Andrews
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 Supplement
巻号頁・発行日
vol.29, 2013

&nbsp;ロシアの北千島列島で繁殖するキタオットセイ(<i>Callorhinus ursinus</i>)成熟メスは,育子期間中に数日間の採餌トリップを繰り返す.トリップ中は,主に夜に採餌潜水を行うことが明らかになっている.日中は,海面で休息や移動,毛繕いなどを行っていると考えられるが,潜水深度データからのみでは,これらの行動を区別できない.そこで,採餌トリップ中の行動シークエンスを明らかにすることを目的とし,育子中のメス 6個体に加速度データロガーを装着した.加速度データロガーから,個体の姿勢変化に伴う低周波成分の加速度,また,ヒレを動かすことによる高周波成分の加速度,および体を震わせて水気を飛ばしたり,毛繕いの際に毛をこすることによる,より細かい動きを抽出し,個体の行動に伴う動きの構成要素を分解した.その後,動きを組み合わせて行動に再構築し,行動シークエンスを明らかにした.この結果,長時間の休息においても,初期と後期では動きの構成が異なっていることが明らかとなった.この手法により,採餌トリップ中のエネルギー収支を詳細に明らかにすることができると考えられる.