- 著者
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松見 紀佳
VEDARAJAN R
- 出版者
- 北陸先端科学技術大学院大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2017-04-01
ポリボロシロキサンのアニオントラップ能力を活かした新機能の創出として、ポリボロシロキサンを支持高分子材料とした高分子イオンゲル電解質の作製とそれらの特性の検討を行った。従来我々が開発した手法によりポリボロシロキサンを合成した後、1-アリルイミダゾリウム TFSIと各種リチウム塩を添加し、高分子イオンゲル電解質を作製した。それらのイオン伝導度の温度依存性に関して交流インピーダンス法により検討した。得られた高分子イオンゲル電解質は概ね10-4 Scm-1以上の高いイオン伝導度を示し、とりわけリチウム塩としてLiFSIを加えた系において最大で1.8x10-3 Scm-1の最大のイオン伝導度を示すに至った。また、イオン伝導メカニズムに関しても知見を得るため、Vogel-Fulcher-Tammannプロットを行い、系内のキャリアーイオン濃度、イオン輸送の活性化エネルギーに関しても算出した。全般に、LiFSI添加系においてはキャリアーイオン濃度が向上し、かつイオン輸送の活性化エネルギーが低下することが明らかとなった。電解質の電気化学的安定性に関して、Li/電解質/Pt型セルを用いた直線走査ボルタンメトリーにより評価し、約4V近く(Li/Li+)の電気化学的安定性を有していることが明らかとなった。その後、Vincent-Evans-Bruce法により系内のリチウムイオン輸率を交流インピーダンス法と直流分極法の併用により算出したところ、常温において0.40のリチウムイオン輸率を観測した。総合的にイオン輸送特性と電気化学的安定性に優れた電解質であることが見出され、様々なエネルギーデバイスへの活用が期待される。