- 著者
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長嶋 淳
- 出版者
- 北陸先端科学技術大学院大学
- 雑誌
- 特別研究員奨励費
- 巻号頁・発行日
- 2004
目標とする名人を超えるコンピュータ将棋ソフトの作成のため,前年度より引き続き,コンピュータ将棋の弱点である序盤を主な対象として改良を行った.前年度にこれまでの研究成果をまとめた論文を雑誌投稿し,7月にNew Mathematics and Natural Computation Journalに掲載された.今年度はこれまでの序盤の研究に加え,序盤を抜けた辺りに見られる仕掛けの問題にも取り組んだ.1つのアプローチとして,局面情報から仕掛けのタイミングを認識し,必要な時にのみ探索コストを集中させて問題への対処とする研究を行った.また,同時に別アプローチとして,人間の対局記録である棋譜から仕掛けなどの数手一組の手順を抽出し,探索に利用する研究のサポートにあたった.本年度も多くのコンピュータ将棋の大会があり,開発を行っているコンピュータ将棋TACOSが多くの成果を残した.1.第16回世界コンピュータ将棋選手権 4位2.11th Computer Olympiad将棋部門 3位3.第2回コンピュータ将棋世界最強決定戦2007 2位1では決勝シードと予選を勝ち抜いた8チームによる総当たり戦において4勝3敗となり,初めて勝ち越しに成功し,過去最高の順位となった.2では1で優勝及び準優勝のプログラムと戦い,3プログラムが全て1勝1敗で並ぶ結果となった.3においても,優勝した激指以外は全て1勝2敗で並ぶ結果であった.これらの結果から,Tacosとトップのコンピュータプログラムと差がほとんど無くなってきた事が確認できた.また,インターネット上の対局サーバでも実力の向上が見られ,強さはアマチュア6段相当に向上したことが確認できた.