著者
Li Min-Yi Zhang Jing Feng Gang Satyanandamurty Tirumani Wu Jun
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌(Journal of Pesticide Science) (ISSN:1348589X)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.22-26, 2011
被引用文献数
10

熱帯地域において,Brontispa longissima(Gestro)はヤシの木に重大な被害をもたらす害虫である。我々は,熱帯マングローブの潜在的殺虫剤リード化合物探索研究において,インドマングローブXylocarpus moluccensisの種子からΔ8,14二重結合をもつメキシカノライドであるカヤシンと2'S-メチルブタノイルプロセラノリドを単離した。これらの化合物の構造は文献データと比較して同定した。50μg/mlの濃度では,カヤシンはB. longissimaの2齢から5齢幼虫に対して強い殺虫効果を示し,2'S-メチルブタノイルプロセラノリドは5齢幼虫に対して顕著な殺虫効果を示した。B. longissimaの5齢幼虫に対する24時間と48時間暴露のLC50(半数致死濃度)は,カヤシンは7.27と3.39μg/ml,2'S-メチルブタノイルプロセラノリドは10.57と4.03μg/mlであった。2種の化合物のB. longissimaの5齢幼虫に対する殺虫活性は,アザジラクチンとトオセンダニンよりも強く,ロテノンと同程度であった。しかし,Prodenia litura(Fabricius)の3齢幼虫に対しては,これらの化合物は中程度の摂食阻害活性しか示さなかった。以上の結果は,カヤシンと2'S-メチルブタノイルプロセラノリドは,B. longissimaの幼虫に対して選択的な殺虫活性を持っていることを示唆しており,B. longissima防除用の有力な殺虫剤候補になると思われる。