著者
東亞合成化学工業株式会社ポリマー事業部
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌(Journal of Pesticide Science) (ISSN:1348589X)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.271-272, 1989

各種毒性試験を実施し, ポリアクリル酸ナトリウムの安全性評価を行なった.<br>ポリアクリル酸ナトリウムのマウスに対する急性経口LD<sub>50</sub>値は10,000mg/kg以上であり, きわめて低毒性の化合物と判断された. ラットの亜急性および慢性毒性試験においては, 高用量群で若干の体重増加抑制の結果も得られたが, 蓄積的毒性ならびに癌化, 前癌的変化などの特異的影響は見られなかった.<br>以上から, ポリアクリル酸ナトリウムは, 食品添加物にも指定されているように, 非常に安全性の高い化合物といえる. また, 魚貝類に対しても通常の使用では問題もなく, 魚毒性はA類に該当している.<br>なお, ポリアクリル酸ナトリウムを含有するアロンAは安全性の高い薬剤である上, 空中液剤散布における補助剤として噴霧粒子中の主剤のドリフト防止効果およびそれにより主剤の病害虫防除効果を向上させうることから, 農業資材としてきわめて有用であると考えられる.
著者
日本チバガイギー株式会社農薬本部開発普及部登録課 株式会社エス・ディー・エスバイオテック企画開発部
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌(Journal of Pesticide Science) (ISSN:1348589X)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.307-309, 1986

カルブチレートの安全性評価のための各種毒性試験の結果, 本剤は急性毒性がきわめて低く, 眼に原体ではきわめて軽度の刺激性を有するものの皮膚に対してはまったく刺激性を有しない. また, 亜急性毒性試験での本剤の最大無作用量は15mg/kg/日 (雄) であり, 細菌を用いた変異原性試験はいずれも陰性を示した.<br>本剤は造林地下刈用および非農耕地用除草剤としてそれぞれ昭和57年および58年に農薬登録され, これらの分野で有用な資材の一つとなっている.
著者
稲塚 新一
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌(Journal of Pesticide Science) (ISSN:1348589X)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.145-154, 1982
被引用文献数
1 3

日本ハッカ油およびスペアーミント (スコッチタイプ) 中の忌避性成分の分離・同定を行なった. ガスクロマトグラフで分取を重ね, 効力試験を行ない, ほぼ単一成分である活性分画を得た. GC-MS, IR, NMR, 比旋光度, 屈折率の測定により, 日本ハッカ油の活性成分として (-)-limonene, (-)-menthone, (-)-menthol および (+)-pulegone を, また, スペアーミント油 (スコッチタイプ) の活性成分として (-)-limonene および (-)-carvone を同定した.<br>さらに, それらの光学異性体である (+) 体およびラセミ体には, 弱い活性しか有していないことがわかった.<br>活性を示す化学構造として cyclohexane 環の4位のイソプロピル基およびイソプロペニル基, および, C<sub>1</sub>・C<sub>2</sub> (あるいはC<sub>1</sub>・C<sub>6</sub>) の2重結合の立体配置が大きく関与していることが考えられた.
著者
株式会社アルム開発本部
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌(Journal of Pesticide Science) (ISSN:1348589X)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.S253-S254, 1992

OKY-500の安全性を評価するため, 各種毒性試験を実施したところ, 本剤はきわめて安全性の高い薬剤であることが示された.<br>OKY-500のラットおよびマウスにおける急性毒性は普通薬に相当した.<br>眼粘膜一次刺激性, 皮膚一次刺激性, および皮膚感作性は陰性であった.<br>変異原性は, 枯草菌を用いたDNA修復試験, 細菌を用いる復帰変異試験および染色体異常試験のいずれにおいても陰性であった.<br>アルムグリーン (試験名OKY-500) は, 平成3年5月に芝用植物成長調整剤として登録を取得した.<br>本剤は日本薬局方第11版の生薬より構成されており, 人畜無害で魚毒性もまったく見られなかった. さらに急性毒性や眼粘膜一次刺激性試験などについても完全に無毒であることが証明された. さらに, 本剤はゴルフ場周辺の樹木に対し何ら影響を与えず, かつ芝の根の生長を促進する効果を示した.<br>このように本剤は漢方薬独特の効能・効果と総合作用を示して, 結果的に病気にかかりにくい芝生を育成するゴルフ場芝生管理用の漢方農薬 (植物成長調整剤) である.
著者
Li Min-Yi Zhang Jing Feng Gang Satyanandamurty Tirumani Wu Jun
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌(Journal of Pesticide Science) (ISSN:1348589X)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.22-26, 2011
被引用文献数
10

熱帯地域において,Brontispa longissima(Gestro)はヤシの木に重大な被害をもたらす害虫である。我々は,熱帯マングローブの潜在的殺虫剤リード化合物探索研究において,インドマングローブXylocarpus moluccensisの種子からΔ8,14二重結合をもつメキシカノライドであるカヤシンと2'S-メチルブタノイルプロセラノリドを単離した。これらの化合物の構造は文献データと比較して同定した。50μg/mlの濃度では,カヤシンはB. longissimaの2齢から5齢幼虫に対して強い殺虫効果を示し,2'S-メチルブタノイルプロセラノリドは5齢幼虫に対して顕著な殺虫効果を示した。B. longissimaの5齢幼虫に対する24時間と48時間暴露のLC50(半数致死濃度)は,カヤシンは7.27と3.39μg/ml,2'S-メチルブタノイルプロセラノリドは10.57と4.03μg/mlであった。2種の化合物のB. longissimaの5齢幼虫に対する殺虫活性は,アザジラクチンとトオセンダニンよりも強く,ロテノンと同程度であった。しかし,Prodenia litura(Fabricius)の3齢幼虫に対しては,これらの化合物は中程度の摂食阻害活性しか示さなかった。以上の結果は,カヤシンと2'S-メチルブタノイルプロセラノリドは,B. longissimaの幼虫に対して選択的な殺虫活性を持っていることを示唆しており,B. longissima防除用の有力な殺虫剤候補になると思われる。
著者
塩野義製薬株式会社植物薬品開発部
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌(Journal of Pesticide Science) (ISSN:1348589X)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.349-353, 1991

アイオキシニルの安全性評価のための各種毒性試験を実施した.本剤は原体, 乳剤, 水和剤とも劇物に指定されている.ウサギにおいて乳剤では高度の眼刺激性および中等度の皮膚刺激性, 水和剤では非常に軽度の眼刺激性が認められたが, 両製剤とも実使用濃度希釈液では眼・皮膚刺激性は認められなかった.また水和剤ではモルモットにおける皮膚感作性が陽性であった.亜急性毒性試験, 慢性毒性/発がん性試験では, 中間・高用量群においてラットおよびマウス肝障害, ラットに体重増加の抑制, 脱毛および甲状腺ろ胞上皮過形成の発生頻度の上昇が認められたが, 発がん性は認められなかった.マウスにおける2世代繁殖/催奇形性併合試験, ウサギにおける催奇形性試験では, 繁殖に及ぼす影響も催奇形性も認められなかった.変異原性に関しては, in vitro染色体異常試験の代謝活性化法の場合のみ疑陽性と判定されたが, 小核試験を始めその他の変異原性試験の結果はすべて陰性であった.薬理試験では特異的な薬理作用は認められなかった.アイオキシニルは昭和42年, 30%乳剤の麦類で初回登録を取得し, その後トウモロコシ, バレイショ, タマネギ, リンゴおよび公園・庭園等に順次適用拡大を行なった.さらに平成元年には芝専用剤である6%水和剤の登録を取得した.アイオキシニルの登録保留基準値は, 麦・雑穀, 果実, 野菜, イモ類についておのおの0.1 ppmと設定されている.アイオキシニルは定められた使用基準を遵守すれば安全性の高い農薬であり, 有用な農業資材の一つとして上市以来好評を得ている.
著者
高橋 正三 武川 恒 高橋 孝志 土井 隆行
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌(Journal of Pesticide Science) (ISSN:1348589X)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.501-503, 1988
被引用文献数
2 11

ワモンゴキブリの性フェロモンの一つペリプラノンA (PA) とそのエピマー (EPA) を使って, <i>Periplaneta</i> 属, <i>Blatta</i> 属6種の雄に対する性フェロモン活性を実験室内で生物検定した. PAのワモンゴキブリに対するフェロモン活性はペリプラノンB (PB) の約1/1000で, EPAの活性はPAの約1/1000であった. PA, EPAおよびPAとPBの混合物はワモンゴキブリ以外にヤマトゴキブリ, トビイロゴキブリ, コワモンゴキブリ, トウヨウゴキブリの雄にもフェロモン活性があった.
著者
Mushtaq Muhammad Naeem 春原 由香里 松本 宏
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌(Journal of Pesticide Science) (ISSN:1348589X)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.68-73, 2013
被引用文献数
11

<span style="font-variant: small-caps;">l</span>-DOPA (<span style="font-variant: small-caps;">l</span>-3,4-dihydroxyphenylalanine) is a bioactive secondary metabolite which inhibits growth of many weed species. However, its mode of action is not well elucidated in plants. The present studies were conducted to evaluate the effect of <span style="font-variant: small-caps;">l</span>-DOPA on root growth of cucumber (<i>Cucumis sativus</i> L.) and the possible involvement of quinoproteins (quinone-incorporated proteins) in phytotoxicity of <span style="font-variant: small-caps;">l</span>-DOPA. The results revealed that <span style="font-variant: small-caps;">l</span>-DOPA significantly inhibited root growth, induced cell death, increased polyphenol oxidase (PPO) activity, reduced free cysteine content, and enhanced quinoprotein formation in cucumber roots. The decrease in free cysteine content and increase in PPO activity suggested that quinones covalently bind with cysteine to form quinoproteins. The quinoproteins may be involved in phytotoxic action of <span style="font-variant: small-caps;">l</span>-DOPA in cucumber roots.
著者
THOMAS J. W. ARMEL G. R. BEST M. D. Brosnan J. T. Klingeman W. E. Kopsell D. A. Bostic H. E. Vargas J. J. Do-Thanh C.
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌(Journal of Pesticide Science) (ISSN:1348589X)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.220-222, 2013
被引用文献数
1

Heterocyclic changes in the chemical structure of existing herbicides may provide new options for weed management. Pyridine and pyrimidine analogues of dichlobenil were evaluated for weed control in ornamental production. All compounds were preemergently applied at 1, 5, and 10 kg/ha to large crabgrass (<i>Digitaria sanguinalis</i>), common purslane (<i>Portulaca oleracea</i>), and Japanese holly (<i>Ilex crenata</i>). The pyrimidine analogue, 4,6-dichloropyrimidine-5-carbonitrile, controlled large crabgrass and common purslane similar to the active ingredient in dichlobenil at 10 kg/ha.
著者
三宅 敏郎 満井 喬
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌(Journal of Pesticide Science) (ISSN:1348589X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.17-24, 1995
被引用文献数
2

抗幼若ホルモン活性物質として知られるプレコセン2のセジロウンカに対する生物活性を検討した. その結果, プレコセン2は, 処理時のウンカのステージ, 処理期間 (取り込み量) を変えることにより1) 速効的な殺虫活性, 2) 早熟変態 (prothetely, 抗幼若ホルモン活性), 3) 過剰脱皮 (metathetely, 幼若ホルモン様活性) という3種の異なった作用を引き起こすことが認められた. このうち, 早熟変態については幼若ホルモン様活性物質であるNC-170の同時処理により作用の発現が打ち消されたが, 天然のJH-1, JH-2, JH-3の同時処理では打ち消されなかった. 一方, 抗幼若ホルモンであるプレコセン2が, なぜ metathetely を誘起するのかは不明であるが, 今回の実験結果における"処理期間と metathetely 発現との関係", および, 過去, バッタ類で観察された同様の結果から推測すると, 虫体に取り込まれたプレコセン2の量が不十分であると, アラタ体を完全に不活性化できず, 逆に幼若ホルモンの生合成/分泌を一時的に促進する効果があるものと思われる.
著者
杉浦 広幸 藤田 政良
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌(Journal of Pesticide Science) (ISSN:1348589X)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.433-438, 2003
被引用文献数
1

エテフォン散布が、露地栽培での夏秋ギクの伸長生長における影響、花芽分化や葉色との関係について調査した。供試したいずれの品種もエテフォン散布区の伸長生長は、散布を受ける期間中は抑制され、その後時間が経過して花芽分化が総包りん片形成期から小花形成期となる時期に速く進み、開花が近くなると停止した。花芽分化抑制のためエテフォン200mg/lの3回散布後1000mg/lを散布したところ、'精雲'と'サマーイエロー'は高所ロゼットになり、その後節間伸長が回復してエテフォン200mg/lの3回散布区と同じ高さに伸長した。摘心とエテフォン散布による伸長生長への影響を調査したところ、無摘心のエテフォン散布区と摘心のエテフォン散布区の生長を比較すると、前者は後者に比べて前半の伸長生長が遅れ、その後短時間で進み草丈は追いついた。また、後者の上部展開葉の葉色が明緑色から濃緑色に変化する時期が、前者に比べて遅延した。以上より夏秋ギクにエテフォンを散布処理すると、散布後直ちに花芽分化、伸長生長および上部葉の濃緑色化を抑制するが、時間経過とともに伸長生長抑制活性は低下し、最終的には草丈の伸長生長を促進した。