著者
山内 志保 Yamauchi Shiho
出版者
心理相談センター
雑誌
心理相談研究 : 神奈川大学心理相談センター紀要 (ISSN:21855536)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.39-47, 2015-03-31

感情調整を適切に行なう能力は,対人関係やメンタルヘルス,ひいてはウェルビーイングにまで良好な影響を及ぼす。脳神経科学においても,扁桃体の反応として生じる情動の統制にイメージや言葉を司る前頭前野の機能が関連することが知られている。つまり,クライエントが自身の感情をイメージや言葉で扱うことは感情調整に役立つと考えられる。本研究では,Emotion-focused therapy の理論と介入を通して,クライエントが自身の感情体験を“子ども”として象徴化し,感情調整力を育んだ2つの事例を報告した。考察では,感情に注目した介入とクライエントの変化について検討した。さらに,感情体験の象徴化が,クライエントの感情調整力のどのような側面を反映しているのかを検討した。本研究より,感情の質感を適切に捉えた象徴化と,その感情に対してクライエント自身が抱く感情,そして感情に対するクライエントの態度が,感情調整力と関連することが示唆された。