著者
松浦 依子 宮崎 玲子 福島 青史 Yoriko MATSUURA Reiko MIYAZAKI Seiji FUKUSHIMA
出版者
国際交流基金
雑誌
国際交流基金日本語教育紀要 (ISSN:13495658)
巻号頁・発行日
no.8, pp.87-101, 2012

本稿ではハンガリーにおける日本語教育教科書『できる』の開発を例に、日本語教育における異文化間コミュニケーション能力の育成の方法とその教材化について一例を示す。ハンガリーの言語教育は欧州評議会の政策に影響を受けており、言語能力のみならず文化的な能力の育成も重要視されている。『できる』においては、Byram、Lázár といった欧州評議会の活動に参加している教育者のモデルを参照し、五つの異文化間能力の定義付けを行い、段階的に教育を行う方法をとった。実際の教材化に当たっては、異文化間能力養成を異なった機能を持つ教科書のコーナーに分散させることで、異文化間能力が静態的な知識に終わることなく、創造的で動態的な性格を持つように複合的なデザインを行った。しかし、異文化間コミュニケーション能力は言語使用者の行動として発現するため、教材の使い方についてより多くの注意が必要である。