著者
Shigeto KAWAHARA Donna ERICKSON Jeff MOORE Yoshiho SHIBUYA Atsuo SUEMITSU
出版者
The Phonetic Society of Japan
雑誌
音声研究 (ISSN:13428675)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.77-87, 2014-08-30 (Released:2017-08-31)

近年の研究では,英語の単語・文レベルの強勢が下顎の開きの大きさに顕現することが示されてきた。この結果を踏まえ,本稿では日本語の韻律パターンがどのように下顎の開きに影響するかを検証した。対象としたのは日本語のピッチアクセント,韻脚(foot),韻律句(phonological phrase)の影響である。EMAを使った本実験によると,ピッチアクセントは日本語では顎の動きに影響が無く,韻脚もはっきりとした影響を及ぼしているとは言いがたい。しかし韻律句に関しては,句の最初や最後,特に文の最後に大きな顎の開きがみられ,ここに何かしら強勢を認めることができる。ここで浮かび上がってくる仮説は,「日本語にも強勢が存在する」というもので,従来の「英語=強勢言語,日本語=アクセント言語」という分類法に疑問を投げかける。