著者
木下 裕一 Yuichi Kinoshita
出版者
桜美林大学経営政策学部
雑誌
桜美林大学経営政策論集 (ISSN:13474634)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.1-16, 2005-12

本論攻においては、アメリカ等の会計基準設定団体および国際会計基準審議会(IASB)が主張している包括利益、とりわけ、その他の包括利益の本質を解明することがその目的である。現代の会計基準は、収益費用アプローチから資産負債アプローチへと会計上の収益認識基準を転換した。その背景には、1990年代末に相次いだIT産業の収益計上をめぐる不正問題があり、その流れを決定づけたものが、2000年代に入ってのエンロン、ワールドコム等の巨額粉飾事件である。これらの事件を教訓として収益認識基準を厳格化する方向を目指すことは十分理解できる。しかしながら、その結果として会計学界が包括利益至上主義一色ともいえる状況にあることは理解し難いものがある。IASB等が主張する矛盾を含んだ包括利益に対する考え方に一石を投じ、稼得利益概念に近い当期純利益の優位性を主張するのが本論攻の目的であり、それこそが会計学研究に携わる者の使命と考えるものである。