著者
福田 敏男 ZYADA Zakarya
出版者
名古屋大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2005

金属探知器(Metal Detector : MD)は現在人間による地雷撤去作業に用いられる最も主要なセンサーである.それはシンプルかつ低価格であり,また浅い地表面に接地された対人地雷(Ann-Personal Mine : APM)を発見することにも役立っている.しかしながら,地雷以外にもあらゆる金属片に反応してしまうために,誤認警報率が高い(約99.95%)という問題がある.一方で,地中レーダー(Ground Penetrating Radar : GPR)により誘電特性に基づいて地中の物体を認識する技術を提供できるが,金属と非金属における誘電不連続面を検出するため,地雷以外の物体にも反応する問題がある.本研究では,誤認警報率を大幅に削減し,浅い地表面に接地された対人地雷を自動検出することを目的としたGPRとMDのファジー融合手法を提案する.金属探知器と地中レーダーはロポットにより操作される.この融合アルゴリズムは,GPRとMDに対し,特徴を入力し判定を出力するファジーアルゴリズムである.ファジー融合システムへの入力はGPRとMD双方の計測結果から抽出された特徴情報である.これらの特徴はそれぞれGPRとMDに対する最大振幅強度と強度の累積和である.ファジー融合システムからの出力は地雷が存在するか,またその場合はどの程度の深さかに関する判定である.ファジー融合規則はファジー学習アルゴリズムを通じて学習データから抽出される.実験結果からファジー融合アルゴリズムの妥当性,および地雷撤去作業における誤認識率を低減できることが示された.本研究からは以下の2つの主要な結果が得られた.第一に,地雷とプラスチックケースや金属ボルトを識別できる可能性であり,これは誤認識率を低減することに寄与するものである.第二点として,GPRとMDセンサーに対して所定の特徴量(最大強度振幅および強度の累積和)は提案されたセンサー融合アルゴリズムにとって十分なものであることである.本研究による提案アルゴリズムは以下の利点を持つ.単純かつ実環境で使用が容易であり,一般的な操作者により実行可能である.アルゴリズムは実環境下の測定結果から得られたファジー学習のルールに基づいているため,環境からの影響が既に学習則に含まれており,例えば水分を含んだ環境状態などの影響が低減されることが期待できる点にある.