著者
半貫 敏夫 岸 明 平山 善吉 佐野 雅史 Toshio Hannuki Akira Kishi Zenkichi Hirayama Masashi Sano
雑誌
南極資料 = Antarctic Record (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2A, pp.456-472, 2002-09

昭和基地で約29年間、居住施設として使われてきた木質プレハブ建築システムを日本に持ち帰り、その耐久性を調査した。先ず、持ち帰った部品を用いて基礎を除く鉄骨架台から上の建物部分を組み立てて復元し、建物全体の劣化状況を観察した。復元工事は5日間、延べ22人の労働力によって完成した。工事は建築専門職人によって行われたが、短期間の人力作業という条件で設計された建築システムの優れた性能が証明された。それぞれの部品はまだ数回の組み立て、解体に耐えられる性能を維持していると判断された。 復元建物の耐久性目視調査の結果、部分的に補修を要する個所もあったが、建物全体としては、まだ設計条件をクリアする性能を維持していることが分かった。パネル外装のめっき鋼板は防火が目的であったが、木質パネルの保護層として有効に作用し、合板の劣化を遅らせた。防水設計を改良すればさらに建物全体の耐久性を増すことが可能である。
著者
半貫 敏夫 高橋 弘樹 石鍋 雄一郎 佐野 雅史 平山 善吉 Toshio Hannuki Hiroki Takahashi Yuichiro Ishinabe Masashi Sano Zenkichi Hirayama
雑誌
南極資料 = Antarctic Record (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2A, pp.490-503, 2002-09

南極昭和基地で約29年間使われてきた居住棟の主要構造部品、屋根、壁、床の各木質パネルの耐久性を評価するための曲げ強度試験を行った。その結果外気に接するパネルの構成材に部分的劣化が認められ、それが構造強度に影響していることが確かめられた。パネルの強度は総体的に落ちているとはいえ、設計強度はまだ十分に維持しており、南極で安全に使用できる構造性能を保っていることが確かめられた。 実験結果を整理すると、南極のような極限環境にある木質サンドイッチパネルの耐久性設計では、表面合板の保全が構造上最も重要な課題であることが分かった。
著者
半貫 敏夫 小石川 正男 平山 善吉 佐野 雅史 佐藤 稔雄 Toshio Hannuki Masao Koishikawa Zenkichi Hirayama Masashi Sano Toshio Sato
雑誌
南極資料 = Antarctic Record (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.61-102, 1993-03

昭和基地建設の歴史的経緯をふまえて, 基地建物の現状と計画的な建物更新の必要性およびその概要を述べた。次いで昭和基地に建つ南極観測用建物の設計・製作に関する制約条件を整理し, これまでに昭和基地で試みられてきた極地建築システムについて概観した。国立極地研究所観測協力室の立案による昭和基地整備計画の最初の事業として企画された「管理棟」の基本構想をまとめるまでの経緯と基本設計の概要を紹介し, 建築・防災・構法などの新しい試みについて解説した。また, これからの南極観測用建築のありかたについても言及した。
著者
平山 善吉 Zenkichi HIRAYAMA
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.980-990, 1961-01

1956年以来昭和基地の建築は毎年,改造,増築等を行いつつ現在(1960年)に至っている.その間1957年から58年迄の基地放棄の1年間があったにせよ,建物は充分にのそ機能を発揮しつつ,健全な成長をとげている.ここでは,初期の平面計画の問題からおし広げられた,現在迄の様子を,新めて基地の立地条件,輸送の問題にふれながら,年ごとにその成長の過程を述べてある.この中では1956年当時の建築面積が,250.6m^2から413.0m^2(1960年)と飛躍的な発展をしたものの,これらのうちの多くは,現地で建設された,簡易建築物であることも見のがすことはできない.またその是非については色々と問題もあろうが当然なされるべき処置であると同時に,その結果は今後の参考になろうと考えられる.最後に1959年,すなわち基地再開時の建物の考察の結果を述べてある.最後にこの建物について検討を加えるならば,そこには若干の不備があったにせよ,南極大陸に立ち自然の猛威に抗しつつ,充分にその目的を達し得たと思う.