著者
Zhang Xiangdong Zhang Jing
出版者
日本海洋学会
雑誌
海の研究 (ISSN:09168362)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, 2002-03-05

北極海における熱力学効果は大気海洋相互作用に影響を与え,そこからの淡水流出は北大西洋の熱塩循環を変える可能性をもっているので,北極海の気候研究は需要である。観測データだけから熱・淡水収支を知るのは困難なので,海氷海洋モデルを大気データと河川からの淡水供給で駆動することによって,熱・淡水収支を調べた。モデルにはネプチューン効果とフラックス修正項が入っている。北極海への熱流入はフラム海峡からの46TW(T=10^<12>)が主である。バレンツ海には43TWが入るが,そのうちほとんどはバレンツ海で大気へ逃げ,北極海には2TWしか入らない。80,000km^3の北極海淡水は,ほぼカナダ海盆とユーラシア沿岸に溜まっている。淡水供給源は河川,降水,ベーリング海峡からの海水流入である。淡水流出は,海水としてカナダ多島海からの3,000km^3 yr^<-1>とフラム海峡からの1,000 km^3 yr^<-1>であり,海氷としてフラム海峡からの1,900 km^3 yr^<-1>である。