著者
葛谷,隆正
出版者
日本教育心理学協会
雑誌
教育心理学研究
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, 1955-07-15

以上18民族に対する学生層及び成人層の態度に関する所見を要約すると次の通りである。(i)好意度の順位と各順位の度数分布状況から18民族を分類すると次の6型式が得られる。第1型式と第6型式とは著るしい好悪に対するstereotyped attitudeがあるものと考えられ、第3型式及び第4型式は各個人に於て好悪の評価に著しい個人差があって、未だ好悪の態度におけるstereotyped tendencyは見られない。第2、第5の型式は前二者の中間型と見られ、全体的に言えば十分なstereotyped attitudeは形成されるに至っていないが、ある程度の固定化傾向を示していると思われる。(ii)各型式の主要特長を述べてみると、(イ)第1、第6の型式の特長-第1型式では接触源が多面的且つ豊富であり、従って理由根拠もその数が多く、各理由条項において凡て好ましいものと評価される。自国民を除いて成人層も学生層も共にドイツ人、フランス人、イギリス人に対してこの第1型式の範疇に於て評価しているが、之は明治初期以来約百年間に亘り凡ゆるマス・コミュニケーションによって浸みこまれた我が国民の彼等諸民族に対する凡ゆる面に於ける卓越性のために根強く喰いこんだ彼等への先進民族観、優秀民族観、逆に言えば彼等諸民族への自己民族の根深い民族的劣等感racial inferioity complexに由るのであると考えられる。アメリカ人に対しては成人層は依然前述の事情により更には太平洋戦争(第二次世界大戦)及びその後のアメリカ人との急激な直接的接触を通して益々彼等を優等視することが強化されるに至ったことにより圧倒的に好意度が高くなっていると思われる。併し学生層では成人層とはその米人観に於て著しく異った排米教育を受け、戦後の日本の歩みが彼等によって束縛され支配され利用されていると感じ、特に政治的に経済的に操られていると感ずるところから、成人層のもっているうな好意的なstereotyped attitudeは崩壊しつつあると考えられる。特に国際的にも米国がその平和政策に於てどちらかと言えば失敗しつつあるとの印象が強く、その為愈々米人への不信を強めていると思われる。

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諸民族に対する好悪の態度の研究1955-07-15 https://t.co/lcB1Xvbfcb 「日本に黒人差別なかった」さんにはとりあえずここらへんを 明治から大正あたりの日本人の諸国漫遊記とかもオススメだゾ
差別と言えば,昭和29年の調査に基づく「諸民族に対する好悪の態度の研究」という今やったらヤバい感じの論文を以前発見した。第2次大戦後の熊本大学生への調査だが,朝鮮人がダントツで嫌われているのが興味深い。なぜなんだろう https://t.co/7DoHmLstan

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