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狩野織染藤原重賢<狩野重賢>//〔画〕
- 出版者
- 写
本資料は優れた花木・草花図譜で、「春上・春下・秋上・秋下」の4巻から成り、夏と冬の巻は無い。「秋下」末尾に「狩野織染藤原重賢画之」とあるので、狩野重賢が著者だが、狩野家の系図には見出せず、経歴などは不明。美濃の加納(かのう)での写生が多いので、加納藩と関係があったように思われるし、狩野は加納のもじりかもしれない。本資料の特徴は、1.図には写生年月日と写生地を記すことが多いが、注記は少ない、2.図を種類ごとにまとめている、3.写生地は大半が加納である、4.年代は、明暦3年(1657)から元禄12年(1699)に及ぶが、万治2年(1659)と同3年が非常に多く、ついで元禄5年(1692)が目立つなど、特定の年に集中している、5.大半が園芸植物で、野生品や農作物は計1割ほどに過ぎず、針葉樹や羊歯類、キノコ類はまったく含まれていない、など。所収種数は「春上」が29種、「春下」が54種、「秋上」が18種、「秋下」が30種、総計131種、品数にすれば284品。アサガオの赤花、アラセイトウ、ウコン(鬱金)、センダイハギの図はいずれも初出と思われる。(磯野直秀)