- 著者
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八文字屋其笑
- 出版者
- 八文字屋八左衛門
- 巻号頁・発行日
- vol.巻之1,3-6, 1750
劇書。もともと全6巻であるが、巻之二を欠く5巻を1冊に合綴してある。寛延3年(1750)3月刊。八文字屋八左衛門板。八文字其笑・八文字瑞笑が巻之六巻末に「撰者」として名を連ねるが、同じく巻之六に跋文を記す南圭梅花嶺老人(多田南嶺)の手によったと考えられている。劇書として分類される刊行物の最も早い例とされる。長らく役者評判記を刊行してきた八文字屋が、その蓄積をいかして、起源・評判・故実・系譜にわたる集大成をめざしたもの。『日本庶民文化史料集成』6巻(三一書房、1973年)に翻刻があり、諸本調査の結果、広告掲載状況から文化文政期に至るまで70年近く刊行され続けたことが確認されている。巻之一は「役者の始りの事」以降、三ヶ津の芝居の起源、役者の濫觴を説く。巻之二は「伎芸圏批巻上」であるが、当館では欠本。巻之三は「伎芸圏批巻中」として、「三ヶ津実悪評」「三ヶ津敵役評」「三ヶ津道化形ノ評」「三ヶ津花車形ノ評」に具体的な事例を挙げている。巻之四は「伎芸圏批巻下」として、「三ヶ津若女形ノ評」「三ヶ津若衆形ノ評」「代々不易江戸太夫之伝」の3項目に、具体的な役者の芸風を列挙している。巻之五は「役者故実巻」として、のちに『役者論語』に収められる「優家七部書」などからの引用も含めて、古名優の言行を摘記している。巻之六は「師弟分派系譜」として、三都の歌舞伎役者の師弟係累が系統別に紹介されている。(児玉竜一)(2017.2)