- 著者
-
大平 晃久
- 出版者
- 九州地区国立大学間の連携事業に係る企画委員会リポジトリ部会
- 雑誌
- 九州地区国立大学教育系・文系研究論文集 = The Joint Journal of the National Universities in Kyusyu. Education and Humanities (ISSN:18828728)
- 巻号頁・発行日
- vol.5, no.1, pp.No.15, 2017-09
本稿は,長崎原爆落下中心碑と爆心地にどのような表象が向けられ、どのように構築されてきたか,場所の系譜をたどった。そして,1980年代まで等閑視されていた中心碑・爆心地が,1990年代になって,行政による「聖域化」と,中心碑撤去反対運動を契機として,重要な,そして広く知られる「記憶の場」として確立したことを明らかにした。その上で,中心碑・爆心地を含む長崎原爆関連モニュメント聖地化の空間的な特徴として,西村明が示した「シズメ」と「フルイ」という慰霊の二側面が分離していること,すなわち,死者の追悼と生者に対する平和祈念という慰霊の両側面を兼ね備えた中心碑・爆心地と,平和祈念に特化した平和祈念像・平和祈念像地区が空間的に峻別された,極めて意図的・操作的な聖地形成がみられることを明らかにした。