- 著者
-
早野 香代
Hayano Kayo
- 出版者
- 三重大学人文学部文化学科
- 雑誌
- 人文論叢 : 三重大学人文学部文化学科研究紀要 = Jinbun Ronso: Bulletin of the Faculty of Humanities, Law and Economics (ISSN:02897253)
- 巻号頁・発行日
- vol.36, pp.67-81, 2019-03-31
近年、大学教育でも行われているアクティブラーニングにおいて、「活動に焦点を合わせた指導」が問題視されるようになった。本稿では、その対策となる内容重視のディープ・アクティブラーニングの実践を報告し、能動性や学習の深化の観点から考察する。実施した科目は、「日本語コミュニケーションA(前期)/B(後期)」という留学生と日本人学生の協働学習である。2016年前期は学習の深化に繋がる可能性を期待し、グループ・インベスティゲイション(学生の興味関心に応じてグループを作り、自分たちで選んだテーマについて深く掘り下げる研究)を、2017年前期にはジグソー法(学生一人一人が責任感を持ち、グループのメンバーと教え会う学習)を試み、2017年後期は両者の利点を生かした折衷法を試みた。2016年前期のインベスティゲイションは、学生らの興味・関心のある内容を重視できたが、教室環境などで課題が残った。2017年前期のジグソー法は、資料を選択できるようにし、全員が教える立場に立つことで学習の深化は見られたが、日本語習得が進んでいない学生には負担となった。2017年後期のジグソー法とグループ・インベスティゲイションの折衷法では、独自の発展的な研究・調査を追加したために、高次の思考に関わる学習の深化が見られた。これは、内容を重視した他に、知識(内容)の獲得のために個々の学生の責任が曖昧にならないAL活動を選び、内化と外化が形を変えながら繰り返し行われるよう、複数の活動を組み合わせ実施していった効果や、仲間との信頼関係を構築しやすい教室環境に改善した効果もある。ディープ・アクティブラーニングには、重視した内容、内化と外化を繰り返せる複数の組み合わせによるAL活動、仲間と構築する信頼関係の3点が重要であることが分かった。今後は、内的活動における能動性の観察・分析方法や授業時間外のグループ学習の方法が課題である。