著者
相澤 康隆 AIZAWA Yasutaka
出版者
三重大学人文学部文化学科
雑誌
人文論叢 : 三重大学人文学部文化学科研究紀要 (ISSN:02897253)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.1-9, 2014-03-30

正しい行為(なすべき行為)とはいかなる行為かを説明することは規範倫理学の諸理論にとって重要な役割の一つである。規範倫理学における一つの理論ないし立場である徳倫理学は、正しい行為を説明することができるのだろうか。この疑間に対して、いわゆる「適格な行為者説」は、次のような仕方で正しい行為の必要十分条件を与える。「ある行為が正しいのは、その行為が、有徳な行為者であれば当該の状況において特徴的に行いそうなことである場合であり、かつその場合に限られる」。有徳な人の行為を正しい行為の規準とするこの定式に対して、主要な反論が二つある。一つは、「有徳な人ならば決して陥らない状況に陥った行為者に対して、この定式は何をなすべきかを教えてくれない」という反論であり、もう一つは、「有徳でない行為者には、まさに有徳ではないがゆえになすべき行為があるにもかかわらず、この定式ではその事実を説明することができない」という反論である。これらの反論を踏まえて、定式に含まれる「有徳な行為者であれば行いそうなこと」を「有徳な人であれば忠告しそうなこと」に修正する試みがあるが、この修正版も固有の難点を抱えている。本稿では、「有徳な人の行為」ではなく、「徳を備えた行為」を中心に据えて定式を作り変えることを提案する。すなわち、「ある行為が正しいのは、その行為が当該の状況において求められる徳を備えた行為である場合であり、かつその場合に限られる」。このように定式化することによって、上記の二つの反論を退けっつ、徳倫理学の立場から正しい行為の説明を与えることができるのである。

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