著者
森 正人 モリ マサト MORI Masato
出版者
三重大学人文学部文化学科
雑誌
人文論叢 : 三重大学人文学部文化学科研究紀要 (ISSN:02897253)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.A65-A80, 2005-03-31

本稿は一九三七年に大阪で南海電鉄会社が行った「四国八十八ヶ所霊場出開帳」に注目し、それがどのような社会的過程で生産されたのかを詳述する。これまでの四国遍路史上、たった一度だけ成功を収めたのが一九三七年の出開帳である。この出開帳は宗数団体が主催したものでも四国内で行われたわけでもなかったため、従来の研究ではほとんど取り上げられることはなかった。またこれは、鉄道・出版資本、国家政策、仏教寺院がそれぞれの思惑を交差させながら重層的に生産されたのである。したがって、この出開帳を取り上げることにより、四国遍路自体の複雑性を示すことができる。また従来の研究における静的な巡礼空間モデルに対して、巡礼空間が社会的構築物であること、さらに、生産された空間が社会的構成を行う社会-空間弁証法が見られることを示すこともできると考える。

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