- 著者
-
清水 まさ志
- 出版者
- 富山大学芸術文化学部
- 雑誌
- GEIBUN : 富山大学芸術文化学部紀要 (ISSN:18816649)
- 巻号頁・発行日
- vol.9, pp.82-99, 2015-02-27
十九世紀フランスの詩人シャルル・ボードレールの詩集『悪の華』第一部「憂鬱と理想」に含まれる詩篇「祝福」「太陽」「高翔」「照応」「あれら裸の時代の思い出を私は愛する」を、「ハシッシュの詩」の冒頭と関連付けて、恩寵的な超自然状態が描かれている詩篇として位置づけた。ボードレールは、これらの詩篇を通して、「楽園」「古代」「子供時代」「善」「理想」とは何かを語り、古典主義的抒情詩人として善の花々をうたってみせた。しかしそれは同時にロマン主義的抒情詩人として「失楽園」「現代」「大人」「悪」「人工の理想」をうたうに至る「前史」を語っていると考えられる。こうした分析を通して、「憂鬱と理想」の構成において、「あれら裸の時代の思い出を私は愛する」を、決定的出発点とみなす観点を述べた。