著者
木村 洋二 渡邊 太
出版者
関西大学社会学部
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.119-164, 2005-03-25

最終戦争による世界の破滅を生き延ぴた修行者が、理想社会を建設する。そのような救済のヴィジョンを抱いていたオウム真理教は、1995年に地下鉄サリン事件を起こした。救済を目指すはずの修行者たちは、なぜ無差別のテロリズムを遂行したのか。この問題を、感情論理のネットワーク分析の視点から渡邊が考察する。宗教的に意味付与されたテロリズムは、献身の感情論理にもとづく。ソシオン理論によると、献身の感情論理は、否定の否定が肯定になる、という弁証法的なネットワーク動作として説明できる。真摯な自己否定は、他者への隷従を帰結する。このとき、献身の対象であるグルに対する不信や指示に従うことの迷いは、必ずしも献身のネットワークからの解放につながらない。オウムの修行者の感情論理においては、葛藤し、迷った挙げ旬に、結局指示に従ってしまうという構造があった。この構造は、現在自分が置かれている状況に対する疑問を抱いたときに、その状況から離脱することを不可能にする。不自由に気づくことが、さらなる不自由へと人を巻き込むようなネットワーク構造がある。閉ざされた環境において、批判的視点を確保する可能性について考察することが本稿の課題である。

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