- 著者
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片桐 新自
- 出版者
- 関西大学社会学部
- 雑誌
- 関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
- 巻号頁・発行日
- vol.30, no.1, pp.1-46, 1998-09-25
本稿は, 1987年以来5年おきに継続的に調査してきた「大学生の意識と価値観」の第3回調査を基礎とした論稿である。本稿の狙いは,この10年の間の大学生の意識と価値観の変化を明らかにすることにある。調査の結果,以下の5点が大きく変化したものとして浮き上がってきた。1)男女関係のあり方に関する意識の変化, 2)社会関心と上昇志向の低下, 3)政治に対する関心と参加意欲の低下, 4)自衛隊に対する肯定的見方の増加, 5)大学別の意識差の縮小。しかし,確かにこうした意識は変化しているが,他方で,その根底にある「やや個人主義的でありながら,他人との協調性を大事にし,大きな社会の変化を望まず,できることなら楽しく楽に暮らしていきたい」という価値観―筆者はこれを「個同保楽主義」と名付けている―自体は,大きな変化はしていないということも明らかになった。