- 著者
-
原 政代
黒田 研二
- 出版者
- 関西大学人間健康学会
- 雑誌
- 人間健康学研究 : Journal for the study of health and well-being (ISSN:21854939)
- 巻号頁・発行日
- vol.11, pp.15-23, 2018-03-31
目的:本研究は、生活保護現業員の仕事のやりがい感に関連する要因を明らかにし、やりがい感を支援する方策を検討することを目的とした。方法:政令指定都市、中核市、特例市である3つの市の10か所の福祉事務所の生活保護現業員全数212人を対象に自記式質問紙調査を行った(有効回答数178人、有効回答率85.6%)。調査内容に含まれる項目のうち、仕事のやりがい感(5件法で質問し回答に1点~5点を付与)を従属変数とした。回答者の属性、職場内の事例検討等の実施、受給者への健康支援の対応、受給者に対する支援関係の基本姿勢、他部門・他機関・他職種等との連携から独立変数を設定して分析を行った。まず、2変数間の関係をt検定、分散分析、相関係数により調べ、仕事のやりがい感に有意に関連を示す変数を見い出し、次にそれらを独立変数としたステップワイズ(漸増法)の重回帰分析を行った。結果:2変数間の関係の分析の結果、仕事のやりがい感と回答者の所属自治体、専門職資格の有無、職場での支援困難事例の相談・検討、定期的な事例検討、健康支援得点、支援関係得点、行政内連携、および医療・介護との連携との間に、有意な関連が見出された。所属自治体を除く7変数を独立変数とする重回帰分析により、仕事のやりがい感に対し、健康支援得点、支援困難事例の相談・検討、行政内連携が有意な関連を示した。結論:生活保護現業員の仕事のやりがい感を支援するには、受給者との関係で健康支援の観点を重視すること、支援困難事例の検討等のスーパーバイズを重視した職場環境づくり、さらに関係部門・機関との連携を図ることが重要である。支援者自らが仕事のやりがい感を感じることは、受給者のQOLの向上を図る上においても重要であろう。