著者
大谷 伸治
出版者
弘前大学教育学部
雑誌
弘前大学教育学部紀要 (ISSN:04391713)
巻号頁・発行日
vol.122, pp.37-46, 2019-10-21

「原子力の平和利用」の始原をめぐっては、冷戦の中でヘゲモニーを握りたい米国政府と潜在的核保有国化を企む日本の保守派が結託しプロパガンダをおこなったことにその責を求めてきた。しかし、3・11 後に本格化した政治史的アプローチによる日本原子力開発史研究は、原子力政策が保守派と革新派の合同プロジェクトとして暗黙の合意を得て始まったこと、またそれにもとづいて55 年体制が形成されたことを明らかにした。一方、3・11 後の原発問題に関する教育実践は、高校新科目「歴史総合」を視野に、「原子力の平和利用」の始原を問う歴史学習の必要性を提起するに至っているが、保守派を断じる従来の認識に留まっており、真の意味での歴史学習を構想するには至っていない。本稿は、新しい歴史学の成果を踏まえて、保守派のみならず革新派の動きも含め総合的に、戦後日本における「原子力の平和利用」の始原を問いなおす戦後史学習案を提案する。

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