著者
小山 真理
出版者
文化学園大学・文化学園大学短期大学部
雑誌
文化学園大学・文化学園大学短期大学部紀要 (ISSN:24325848)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.111-125, 2020-01-31

近年、中国からの留学生が急増し、その影響なのか、以前より抱いていた疑問を強く感じるようになった。そ れは「なぜ中国人留学生は文字を、とりわけ漢字を丁寧に書かないのか」というものだ。その答えを探るため、 まず、日中両国の初等教育における漢字・文字教育を概観し、手書きの書字・字形等について、どのような指導 を受けてきたかを比較した。その上で、漢字・書字に対する意識が、日本語を学ぶ際、どう影響しているかについて、アンケートとインタビューにより分析し考察した。その結果、多くが小学校で厳しく指導され、丁寧な書字、筆順の順守を当然と考えていることがわかった。だが、成長するにつれて筆順を忘れ、自己流の書き方に慣れてくると、改めて日本の漢字を学ぶのは小学生のようだと抵抗感を示した学生も多くいた。さらに、既有の漢字知識があるため、「日本の漢字は少なくて簡単だ」と捉えがちで、特に、集中力や慎重さに欠け、成績の芳し くない学生は文字を乱雑に書く傾向があった。漢字・書字に対する意識に個人差はあるが、日中の漢字の差異は学生自身では気づきにくいことも明らかとなり、教師が注意して訂正させることは、今後も必要不可欠であることが確認できた。

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