著者
畑中 邦道 Hatanaka Kunimichi
出版者
神奈川大学 国際経営研究所
雑誌
国際経営フォーラム (ISSN:09158235)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.73-115, 2012-07-31

国際物流に関わる比較優位は、グローバルエコノミーにおける自由貿易を前提に議論されているが、分配側のことについては、あまり細かく検討されていない。分配の持つ根源的課題を、需要という言葉で、ひとくくりにして扱っている。現在の資本主義経済では、国際物流は、需要と供給の関係でしか成り立っていないように、理解されている。本来は、需要側にある分配問題が、国際物流の大きな課題であることに目をつぶっている。供給側の論理により、実物である商品の移動及び生産立地は、個別企業経営における戦略的選択により、変化する。戦略的選択がなされると、国際物流は、ある日突然、方向と実態の姿を変えてしまう。実物の流れが変わった時、価値の移動とその保管は、その持つ意味や意義を全く別なものにしてしまう。価値の移動や交換に伴って生まれる、資本蓄積と再投資のインセンティブは、人類の歴史を通して現在ある形になり、資本主義経済のグローバル化を促進させている。分配問題を無視する国境を持たないグローバル資本は、国家の自立性の確保や保護などお構いなしに、商品の生産立地国や、分配側の受容国を、支配してしまう。これに対し、日本でしか起きなかった、カイゼン活動から生まれた、ジャスト・イン・タイムの経営手法や、優れた生産技術の優位性は、特異な存在である。この特異な環境を持つ構造が、国際物流をどのように変えてきたかについて、検討しておく。技術集団である中小企業による産業のクラスターを持つ日本特有の構造は、経済学の一般論からみる比較優位の議論から、大きく乖離して存在している。日本国内における、その環境の構造は崩壊直前とも言われているが、それらの現状について検証しておく。本論では、国際物流について、歴史的な大きな流れの変化を俯瞰しながら、現在ある課題の抽出を試みている。このため、日々の実務である、輸出入に関わる実務者レベルの作業手順や法的手続きの詳細比較、及び、国際物流ではコストとなる3PL(サード・パーティ・ロジステックス)のような、輸送専門事業者についての具体的な活動については、論じていない。

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