著者
浪岡 新太郎 NAMIOKA Shintaro
出版者
明治学院大学国際学部
巻号頁・発行日
vol.39, pp.35-62, 2011-03-30

現在,フランスには約370 万人のムスリム系移民出身者が定住している。彼らは,そのイスラームへの帰属意識を理由としてフランスへの帰属意識をもつことができないのではないかと疑われている。市民の平等や政教分離といったフランスの基本的価値が,政教一致や男性優位主義のような「イスラームの基本的価値」と矛盾するのではないかと主張された。こうした状況を背景に,彼らのフランスへの帰属意識を強めようと,フランスの基本的価値を教え込むためのシティズンシップ教育の強化が主張されている。本稿は,①彼らにとってフランスの基本的価値は,その排除や差別の経験から実感されておらず,②実際にはシティズンシップ教育で教えられる基本的価値はマジョリティに優位に機能しており,③彼らにとってイスラームへの帰属意識は,排除や差別にもかかわらずフランスの基本的価値を遵守することを可能にする点でシティズンシップ教育の役割を担っていることを明らかにした。

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