- 著者
-
久保田 義弘
- 出版者
- 札幌学院大学総合研究所
- 雑誌
- 札幌学院大学経済論集 = Sapporo Gakuin University Review of Economics (ISSN:18848974)
- 巻号頁・発行日
- no.9, pp.1-25, 2015-03-10
本稿では,9世紀から10世紀にかけてのスコットランドがピクト王国からアルバ王国への発展・移行したこと,ならびに,その同時期におけるその周辺国の事情を概観する。特に,ピクト王国が後世になって“Viking”と呼ばれている人々(民族)の侵攻に対峙し,その戦いの結果,スコットランドの統一王国であるアルバ王国が形成された。また,ヴァイキングとの戦いから,スコットランドと同時に,イングランドにおいては,ウェセックス王国がイングランド全体を治めるようになり,イングランド統一王国が形成された。さらに,周辺国の事情では,特に,ヴァイキングとアイルランド王(上王:high king)との敵対,あるいは,両者の共闘を通じて,ヴァイキングの果たした歴史的役割の一端を考察する。本稿は,3節から構成され,第1節では,ピクト王国からアルバ王国への移行期となる9世紀中旬から9世紀末までの時代を概観する。その時代は,スコットランド王のケニス1世からドナルド2世までの治世に対応する。第2節では,スコットランド王のコンスタンティン22世の治世とその周辺国の事情を概観する。同時に,特に,アイルランド王国の上王とヴァイキングの対立あるいは共闘についても概観する。第3節では,資料を通して,ピクト王国からアルバ王国に移行する時代は,コンスタンティン2世の治世に対応していることを概観し,併せて,それを検証する。