著者
石田 頼房
出版者
東京都立大学都市研究センター
雑誌
総合都市研究 (ISSN:03863506)
巻号頁・発行日
vol.74, pp.23-45, 2001

この論文は、2000年8月22-26日にフィンランドのラハチ(Lahti)で開催された、第9回ヨーロッパ日本研究学会国際会議の都市・環境分科会においてLocalInitiatives andDecentralization of Planning Power in Japanという題で行なったキーノートスピーチの日本語版であるが、掲載に当たって結論部分の充実を中心に加筆・修正を行なった。日本都市計画は国の事業として、極めて中央集権的な制度として発展してきたことは、良く知られている。このような中央集権的な制度は、1919年都市計画法によって完成し、1968年都市計画法で機関委任事務としてではあるが、都道府県知事と市町村に「分権化」されるまで、戦前・戦後を通じて維持された。さらに、1968年都市計画法以後も、国の関与を通じて実質的に中央集権的性格は強く残っており、1999年の地方分権一括法及び都市計画法の2000年改正によっても完全な形での地方分権は、にわかには期待で、きないといえよう。しかし、この論文では、このような日本都市計画の中央集権的発展を歴史的に跡づけるというよりは、そのような歴史の中にあっても、ほとんど常に、中央集権に反対する動きや、必要に迫られた地方独自の都市計画への取り組みが存在し、それが国の都市計画政策に、制度的にも技術的にも影響を与えてきたという、いわば下から上への流れに注目して検討する。この論文でLocalInitiativesといっているのはその意味である。都市計画の地方分権は、都市計画制度の上で分権が規定されれば実現するのではなく、都市計画を取り囲む政治的、経済・社会的背景、さらに都市計画に関わる総ての人々の意識・行動様式まで含めた、最近、planningculture (計画文化・計画的風土)という概念で扱われるような都市計画に関わる総体的な状況が、地方分権にふさわしく転換することによってはじめて可能になる。それは、突然に可能になるのではなく、この論文で取り扱うような地方のイニシアティブが、今後とも積み上げられることで可能になるであろう。

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編集者: Abestitem
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