著者
大林 隆司
出版者
首都大学東京小笠原研究委員会
雑誌
小笠原研究年報 (ISSN:03879844)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.31-39, 2015-05-31

純然たる海洋島である小笠原諸島の聟島列島、父島列島そして母島列島に分布する唯一のセミ、オガサワラゼミは固有種であるとされ、国の天然記念物に指定されている。しかし本種は、南西諸島に分布する同属の別種クロイワツクツクと形態的にも生態的(鳴き声など)にも極めて近く、そのため本種は明治時代以降に小笠原諸島が日本領になってから、南西諸島からの植物と共に移入された可能性が指摘されてきた。しかし、江戸時代末期に幕府が小笠原回収事業のために派遣し、文久二年から三年(1862年~1863年)に父島に滞在した本草学者、阿部櫟斎が書き残した日記(紀行文)、『豆嶼行記』ならびに『南嶼行記』の数か所に「蟬」の記述があることから、明治時代以前の江戸時代に父島にセミが分布し、その記述(形態、鳴き声、発生時期:秋)からも現在のオガサワラゼミの可能性が高いと考えられた。また、明治初期の明治16年(1883年)に曲直瀬愛が編纂した『小笠原島物産誌略』にも「蟬」の記述があり、このことを裏付けるものと考えられた。さらに、阿部櫟斎の父島滞在と前後して小笠原諸島(父島、兄島)を訪れたジョン万次郎も、「蟬」の声を聴いていた可能性があると推察した。

言及状況

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大林隆司「小笠原諸島における最初のセミの記録はいつか?」(『小笠原研究年報』38、2014年)は、幕末期に外国奉行・水野忠徳が小笠原諸島の回収を推進した際、父島に滞在した本草学者の阿部櫟斎の日記が、小笠原における蝉の記録の初出とする。下記は論文PDFへの直リンク。 https://t.co/yov5phH7Hh

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