著者
荒木 純子
雑誌
人文
巻号頁・発行日
no.16, pp.87-106, 2018-03

1953 年初演のアーサー・ミラーの戯曲『るつぼ』は、1692 年のセイラムでの魔女狩りを扱ったものである。1940 年代50 年代にアメリカで起きたいわゆる赤狩りにも触発されたことが知られている。本稿は、現在も再演されることが多いこの古典作品の意義を、これまでのピューリタン研究の文脈にも照らし、1つの歴史解釈として検討してみる。1930 年代にピューリタンの原典読み直しにより、ピューリタンはより人間的な存在として捉えられるようになった。さらに1960年代以降の新しい社会史の台頭により、セイラムの魔女狩り研究も17 世紀末の社会的政治的不安への心因性の反応という観点から説明されるようになった。そのようなピューリタンの知識に照らしてみると、ミラーはこの作品の中で、意図した通りに事件の「本質」を描いているようである。そしてその「本質」が、今日不寛容になっている社会で、人々の心に強く響くのであろう。

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https://t.co/v8SXaWGek1 るつぼはリンク先論文にもある通り、実際には1940〜50年代にアメリカで吹き荒れた赤狩り、マッカーシズムを、事実その被害に遭った作者がその手で戯曲化したものです。が、史実とは幾つかの点で明白に違います。 →

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