著者
荒木 純子
雑誌
人文
巻号頁・発行日
no.16, pp.87-106, 2018-03

1953 年初演のアーサー・ミラーの戯曲『るつぼ』は、1692 年のセイラムでの魔女狩りを扱ったものである。1940 年代50 年代にアメリカで起きたいわゆる赤狩りにも触発されたことが知られている。本稿は、現在も再演されることが多いこの古典作品の意義を、これまでのピューリタン研究の文脈にも照らし、1つの歴史解釈として検討してみる。1930 年代にピューリタンの原典読み直しにより、ピューリタンはより人間的な存在として捉えられるようになった。さらに1960年代以降の新しい社会史の台頭により、セイラムの魔女狩り研究も17 世紀末の社会的政治的不安への心因性の反応という観点から説明されるようになった。そのようなピューリタンの知識に照らしてみると、ミラーはこの作品の中で、意図した通りに事件の「本質」を描いているようである。そしてその「本質」が、今日不寛容になっている社会で、人々の心に強く響くのであろう。
著者
遠藤 泰生 中野 勝郎 増井 志津代 荒木 純子 松原 宏之 橋川 健竜 肥後本 芳男 佐々木 弘通 森 丈夫 中野 由美子 久田 由佳子 金井 光太朗 CHAPLIN joyce CAPOZZOLA christopher GOODMAN david JAFFEE david HALL david
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

「公民的要素」「政治的要素」「社会的要素」他の要素に市民権を分別しその成長を直線的に理解することに西欧の市民社会理解は特徴付けられる。しかし、19世紀前半のアメリカ合衆国における市民編成原理の歴史を理解するには、そのような枠組みは図式的すぎる。19世紀前半の合衆国における市民編成原理の追求は、領土の拡大と不断の移民の受け入れ、消費革命の浸透、奴隷制度の是非をめぐる論争などの問題に直面しながら行われた。本研究ではその歴史を、手稿請願、読書習慣、教会説教、大西洋世界における図像リテラシー他を媒体とする非公式の政治行為に携わる市民をも包摂する、巨視的視野から検討する。
著者
遠藤 泰生 荒木 純子 増井 志津代 中野 勝郎 松原 宏之 平井 康大 山田 史郎 佐々木 弘通 田辺 千景 森 丈夫 矢口 祐人 高橋 均 橋川 健竜 岡山 裕
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

領土の拡大と大量移民の流入を規定条件に建国後の国民構成が多元性を増したアメリカ合衆国においては、社会文化的に様々の背景を持つ新たな国民を公民に束ねる公共規範の必要性が高まり、政治・宗教・経済・ジェンダーなどの植民地時代以来の社会諸規範が、汎用性を高める方向にその内実を変えた。18世紀と19世紀を架橋するそうした新たな視野から、合衆国における市民社会涵養の歴史を研究する必要性が強調されねばならない。