- 著者
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竹田 志保
- 雑誌
- 人文
- 巻号頁・発行日
- no.16, pp.240-221, 2018-03
吉田秋生による漫画『櫻の園』(一九八五年)と、中原俊監督による映画化作品(一九九〇年)は、名門女子高校の演劇部を題材として、〈女子〉たちの友情と、彼女たちの〈性〉をめぐる葛藤を描いて、双方が高い評価を受けた。本論は、両作の比較検討から、近年の〈女子〉をめぐる欲望について考察したものである。両作は、成長期の〈女子〉の表象としてリアリティをもって迎えられる一方で、〈女子〉への幻想を強化するものでもあった。他者から一方的にまなざされることへの抵抗を示す登場人物を描きながらも、その抵抗自体が性的に消費されてしまうという本作の矛盾は、〈女子〉表象についての重大な問題提起をしている。漫画版はそれを「見せない」手法によって表現したが、映画版は窃視的なカメラによってそれ自体をフェティッシュ化してしまっていることを指摘した。