- 著者
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前田 直子
- 雑誌
- 人文 (ISSN:18817920)
- 巻号頁・発行日
- vol.4, pp.131-144, 2006-03-25
接続助詞「し」には「並列」と「理由」の2 用法があると言われている。しかし、両者の関連、あるいは、「並列」することがなぜ「理由」を表すことになるのかについては、これまで明確に説明されてこなかった。本稿は、「並列」の「し」が用いられている文脈を分析することにより、「並列」の「し」は、単なる事態の並列ではなく、すでに並列の段階で、話者の主張・判断の理由や根拠を並べているものであることを示す。「し」にはこのように「因」を並べる場合があり、これが「理由」の「し」に連続していくと考えられる。また「し」は「因」を並列させるだけでなく、「果」を並列させる場合もある。「し」は「因」または「果」を並べて、話者の主張・判断を補強する機能を果たしている。こうした「し」の意味・用法を探るためには、テキストレベルでの分析が必要であり、これは他の複文・従属節の分析においても今後、期待されることである。