- 著者
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渋江 陽子
- 出版者
- 京都産業大学
- 雑誌
- 京都産業大学論集. 人文科学系列 (ISSN:02879727)
- 巻号頁・発行日
- vol.53, pp.167-196, 2020-03-31
本稿では,イタリアの詩人ガブリエーレ・ダンヌンツィオが第一次大戦以前の飛行機パイオニア時代に,飛行機とどのような関わりをもったのかを概観し,考察する。 イタリアの飛行機時代の幕開けは1908 年頃である。翌年4 月にウィルバー・ライトがローマを訪れ,パイロット候補者に飛行訓練を行った。9 月にはブレッシャ近郊で,イタリアでは初めての国際飛行競技会が開催された。この大会はイタリアが飛行機の分野で発展を始める契機となった。 ダンヌンツィオは,ブレッシャ大会で飛行機に乗せてもらう機会を得た。詩人の飛行機への関心は熱狂的なものとなり,この新しい乗り物を表す単語をラテン語から導入することを提唱した。飛行家が主人公の小説を書き,この航空機についての講演会も開いている。 飛行機小説には,主人公がグライダーの滑空練習を経て,エンジン付きの飛行機を製作する場面がある。アメリカやフランスにはあっても,自国にはないと感じた狭義の飛行機パイオニア時代を描くことによって,ダンヌンツィオは現実を補完しようとしたのではないかと思われる。