著者
中川 さつき
出版者
京都産業大学
雑誌
京都産業大学論集. 人文科学系列 (ISSN:02879727)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.389-406, 2015-03

『ウティカのカトーネ』(1728)はメタスタジオにとって3 作目の音楽劇である。主人公カトーネは共和政ローマの理念を守るために,和平を拒んで名誉ある死を選ぶ。カトーネの高潔なモラルと,ライバルであるチェーザレの寛容の徳との対比がこの劇の核である。簡潔で力強い台詞と劇的な緊張感に満ちた傑作であるが,同時代の観客は愛国的なテーマにそれほど心惹かれず,また主人公が呪詛の言葉を吐きながら死んでゆく場面は激しい反発を巻き起こした。メタスタジオ自身はこの作品を偏愛していたが,『アッティリオ・レーゴロ』(1740)で一度だけ英雄悲劇に立ち戻ったことを例外として,その後は宮廷の人々の好みに従って,君主と臣下の理想的な関係を描いたハッピー・エンドの劇を書き続けたのであった。

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