本稿では,経済発展の根源的要素は人的資本であるとの認識のもと,人的資本と物的資本蓄積による経済発展の過程を分析する。そのために,Galor and Moav(2004)(以下,GMモデルと記す)に着目する。ただし,GMモデルにはいくつかの欠陥と呼んで差支えない構造が含まれている。たとえば,経済の初期段階から成熟期に渡る長期の過程を分析しているのにもかかわらず,モデルには技術革新が存在せず,不変の生産関数を仮定していることである。本稿では,技術革新をGMモデルに導入し,理論的にモデルを再構築したうえで,中国に注目し,同国の経済発展過程を実証分析する。本稿のオリジナルは,人的資本を測定するための新たな人的資本係数を導入している点にある。