著者
栗田 健一
出版者
北海道大学大学院経済学研究科
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.115-128, 2006-06-08

本論文では,ギルド社会主義思想を別の形で摂取し,独自の経済観を構想したC.Hダグラスの研究をおこなった。ダグラスは,市場と国家とは違う領域に経済の調整を任せるという発想を持っていた。この研究では,中央政府と分権的生産者銀行が協調しながら,市場経済がもたらす不安定性を除去するという視点をダグラスが持っているということが明らかにされた。特に,彼の重要な概念である「有形信用」と「金融信用」に着目した。「有形信用」とは潜在的な生産力概念を示すものである。例えば,石炭の生産でまだ150トン生産できる可能性があれば,「有形信用」は,その余剰生産力を意味している。そして「金融信用」とはその余剰生産力を顕在化させるための貨幣であり,通常は銀行から供給される。だが,ダグラスはこの「金融信用」の供給を市場で活動する銀行や国家に任せるのではなく,労働者達のアソシエーションである分権的生産者銀行に任せるという発想を持っていた。この発想に彼のオリジナリティーがあり,市場や国家とは違う領域の重要性を持っていた点に,彼の思想の意義があるという主張をおこなった。

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