著者
宮﨑 隆志
出版者
北海道大学大学院教育学研究科附属子ども発達臨床研究センター
雑誌
子ども発達臨床研究
巻号頁・発行日
vol.1, pp.39-44, 2007-03-30

「生きづらさ」に関わって以下の3つの論点を検討する。①機能的な差異が生じたときに、善意に基づ く配慮が「逸脱」を刻印するのは何故か、②現代の日常生活における「正常」を規定する論理は何か、 ③「生きづらさ」を克服しうる社会関係が備える特質は何か。 現代における商品化の進展は、商品・資本が主体となって自己展開する社会システムを成立させ、個 人はその下で分断され、引き裂かれている。その分断・分裂に耐えることが「正常」とされ、機能的な 差異を有する者への「配慮」は、自らの分裂性を隠蔽しつつなされるため、配慮する者とされる者の間 にはモノローグ的関係が生ずる。 両者が共に生きづらさを対象化するには、協同性の発展を内実とする社会関係資本の形成が必要であ り、そのような関係の下でのみ自己内対話は対話的なものとなり、新たな主体の形成が可能となる。

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