- 著者
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永尾 一平
- 出版者
- 北海道大学低温科学研究所 = Institute of Low Temperature Science, Hokkaido University
- 雑誌
- 低温科学 (ISSN:18807593)
- 巻号頁・発行日
- vol.72, pp.1-14, 2014-03-31
海洋生物相により生成される硫化ジメチル(DMS)は, 大気中の酸化反応を経て雲凝結核(CCN)となる硫酸エアロゾル粒子を生成する. したがってDMS放出量変化は地球の放射収支に影響を与える可能性があり, 海洋生物圏と雲と気候のリンクに関する仮説(CLAW 仮説)が1987年に提示された. その後, この仮説の検証を通してDMSの研究が大い進展したが, このリンクの複雑さゆえに現時点でこの仮説の検証の最終的な結論はでていない. 本稿では, これまで行われた多くの研究成果をもとに, DMS研究の進展と現状について整理することを試みた. また, モデルを用いた将来の気候下でのDMSの応答に関する研究結果も取り上げ, DMSの気候調節の可能性を調べた.