著者
村上 正隆
出版者
北海道大学低温科学研究所 = Institute of Low Temperature Science, Hokkaido University
雑誌
低温科学 (ISSN:18807593)
巻号頁・発行日
vol.72, pp.297-310, 2014-03-31

人工的に生成した氷の微粒子を雲内に導入し, 自然の雲が雨・雪を生成するメカニズムの持つ律速過程にバイパスをつけて降水を促進させる人工降雨技術(意図的気象改変)は, 第二次世界大戦直後に華々しく登場し, 現在では世界40か国で使用されている. 本稿では, 人工降雨の原理・歴史・現状と問題点を述べるとともに, 最新の人工降雨研究の取り組みを紹介する.
著者
高市 真一
出版者
北海道大学低温科学研究所 = Institute of Low Temperature Science, Hokkaido University
雑誌
低温科学 (ISSN:18807593)
巻号頁・発行日
vol.67, pp.347-353, 2009-03-31

光合成生物にとってカロテノイドの存在は必須であり,多種多様なカロテノイドがある.光合成生物の分類群ごとに特有なカロテノイドもある.本章ではカロテノイドの抽出,精製,同定などの方法を解説する.
著者
瀬戸 陽介 小山 あずさ 田村 浩一郎
出版者
北海道大学低温科学研究所 = Institute of Low Temperature Science, Hokkaido University
雑誌
低温科学 (ISSN:18807593)
巻号頁・発行日
vol.69, pp.157-163, 2011-03-31

抗菌ペプチドはショウジョウバエにおいて主要な生体防御機構の一つであり, キイロショウジョウバエでは, これまでに7種類が同定されている. これら抗菌ペプチドは種類によって活性を示す対象の微生物が異なり, バクテリアに対して強い抗菌活性を示すものや真菌類に強い抗菌活性を示すものが知られている. 様々な研究から, 抗菌ペプチドは, 個体レベルでは個体の微生物に対する抵抗性に大きく影響することが, 遺伝子レベルでは種類によってその分子進化パターンが異なることが明らかとなっている. そこで, 本稿では抗菌ペプチドの分子進化と抗菌活性や個体での抵抗性との関わりについて論じる.
著者
岩井 雅子 広瀬 侑 池内 昌彦
出版者
北海道大学低温科学研究所 = Institute of Low Temperature Science, Hokkaido University
雑誌
低温科学 (ISSN:18807593)
巻号頁・発行日
vol.67, pp.575-582, 2009-03-31

シアノバクテリアは真正細菌の一種として,相同組換による遺伝子操作がよく整備されているものが多いが,重要な種でも形質転換できないものもある.代表的な形質転換のプロトコルとともに今後の展望を述べる.
著者
樋本 和大 松本 正和 田中 秀樹
出版者
北海道大学低温科学研究所 = Institute of Low Temperature Science, Hokkaido University
雑誌
低温科学 (ISSN:18807593)
巻号頁・発行日
vol.71, pp.131-140, 2013-03-31

計算機シミュレーションにより氷VIIと液体状態の水に挟まれた温度・圧力領域での存在が予測されている水のプラスチック相(プラスチック氷)について, 現在までに明らかとなった構造や水素結合連結性の特徴およびダイナミクスを紹介する. 特に, プラスチック氷の存在を最初に取り上げた論文について, その発見に至る経緯と同定の根拠, およびプラスチック氷の性質を概観し, その後の進展について触れる.
著者
山本 鎔子
出版者
北海道大学低温科学研究所 = Institute of Low Temperature Science, Hokkaido University
雑誌
低温科学 (ISSN:18807593)
巻号頁・発行日
vol.70, pp.1-8, 2012

雪が着色する現象は世界の山岳地帯や極地でしばしば観察されている. 最も普通にみられるのは赤雪でその多くはChlamydomonas のような単細胞性の緑藻が原因である. しかし本報告の尾瀬においては4月から5月かけての融雪期にみられる大規模な雪の赤褐色化は, 直径約10μm の球もしくは楕円状の赤褐色粒子によるものである. 赤褐色の原因は単細胞性の緑藻Hemitoma 胞子の被殻に多量に含まれる酸化鉄が原因である.Spring red snow phenomenon is frequently observed in alpine and polar environments with extremely low temperature, high light intensity, and low nutrient levels around the world. The red snow phenomenon is mostly caused by the green algae such as Chlamydomons and Chloromonas, and its reddish color is derived from carotenoids in the algae's vacuoles. However, we have recently found that the red snow in Oze National Park in Japan is caused by the green algae, Hemitoma, and its reddish color is caused by Fe-oxide accumulating at the surface of spores in the alga. Therefore, the cause of the red snow is divergent. In this review, we overview recent knowledge of the algae-dependent red snow.
著者
永尾 一平
出版者
北海道大学低温科学研究所 = Institute of Low Temperature Science, Hokkaido University
雑誌
低温科学 (ISSN:18807593)
巻号頁・発行日
vol.72, pp.1-14, 2014-03-31

海洋生物相により生成される硫化ジメチル(DMS)は, 大気中の酸化反応を経て雲凝結核(CCN)となる硫酸エアロゾル粒子を生成する. したがってDMS放出量変化は地球の放射収支に影響を与える可能性があり, 海洋生物圏と雲と気候のリンクに関する仮説(CLAW 仮説)が1987年に提示された. その後, この仮説の検証を通してDMSの研究が大い進展したが, このリンクの複雑さゆえに現時点でこの仮説の検証の最終的な結論はでていない. 本稿では, これまで行われた多くの研究成果をもとに, DMS研究の進展と現状について整理することを試みた. また, モデルを用いた将来の気候下でのDMSの応答に関する研究結果も取り上げ, DMSの気候調節の可能性を調べた.
著者
大村 纂
出版者
北海道大学低温科学研究所 = Institute of Low Temperature Science, Hokkaido University
雑誌
低温科学 (ISSN:18807593)
巻号頁・発行日
vol.72, pp.311-317, 2014

The cause for the global temperature change of the last one hundred years is investigated in light of the earth's energy balance. The material used for the present paper is mostly observed at the earth's surface or from the space. While the enhanced greenhouse effect steadily increased,the aerosol effect fluctuated as a result of the decadal variation in aerosol emission. A cooling period witnessed for 30 years in the middle of the 20th Century is considered to have been caused by aerosol effect that surpassed the enhanced greenhouse effect. This cooling episode coincided with the period of declining surface global solar radiation,which was subsequently coined as the Global Dimming. The Mie-scattering theory can however explain only half of the decrease. The remaining half is considered due to the increase in cloud, which has been confirmed by the observations at the surface and from the space. Thus the ongoing climate warming is caused by a delicate imbalance between the increasing rates of greenhouse gases and of aerosol. The turning point of the total radiation from the negative to the positive phases is estimated to have happened sometime in the 1970s, which corresponds to the end of the cooling period and the beginning of the unprecedented warming. In the near future it is possible that the temperature trend may turn negative, if the aerosol effect overtakes the greenhouse effect. The currently observed slowing down of the warming after 2005 may well be the result of the increasing aerosol.二十世紀初頭以来の百余年間は人為的温室効果による温暖化の時代と言われる. たしかに1900年以来全球平均でほぼ1℃昇温した. しかし, 温度変化を注意して見ると単調増加ではない. 1910年から30年間昇温した後, 1940年から1970年までの30年間昇温が停まっただけでなく, 0.1℃強寒冷化した. その後再び昇温に転じ1970年からの40年間だけで0.9℃温暖化した. これは全球平均の話で, この通りの変化を示した地域はないが, 二十世紀初期の温暖化と, それに続く寒冷化そして最近の顕著な温暖化という三相変化は位相をわずかに異にしてほぼ全球で見られる. 従って, 二十世紀中葉に現れた寒冷化は全球的現象であった. この30年にわたる全球規模での温暖化トレンドからの逸出はENSOやその他多く知られている振動現象では説明できない. この寒冷化の原因が分からなければ二十世紀全般にわたる温度変化の原因も正確には理解できないことになり, 又将来の予測もおぼつかないことになる. したがって, 本論文では, 二相の温暖化に挟まれた寒冷化の原因を極める. そのために, 本論文では甚だ基礎的になるが気候システムにおける温度生成過程を熱力学第一法則に基づいて考える. 地球表面の温度生成における放射の占める役割を認識し, 二十世紀初頭以来観測された全天太陽放射, 直達放射と大気の透過度を分析する. 全天太陽放射の経年変化から二十世紀初頭から1950年にかけての第一次グローバル・ブライトニング(全天太陽放射の増加期),1950年代から80年代にかけてのグローバル・デイミング(全天太陽放射の減少期), 更に80年代から2005年にかけての第二次グローバル・ブライトニングの3時代が認識される. その間に観測されたデイミングとブライトニング間の大気の透過度の変化は0.05であった. この透過度の変化に相当するエアロゾルの直接効果(ミー散乱)だけでは全天放射の変動量の約50%しか再現できないことが判り, 残りの50%はエアロゾルの間接効果,即ち雲の経年変化に帰着される. エアロゾルによる光学行程と雲量の相関はきわめて高く, この時期のエアロゾル間接効果と思われる雲の変動は全雲量で4%, 日照時間では日に0.4時間に相当する. この雲量の変動は地上と衛星から観測された結果である. グローバル・デイミングの続いていた期間は全天太陽放射の減少率が長波放射の増加率を上回り全放射率が減少していたことが判明し, これが気温低下を引き起こしたと考えられる. 続く1980年代からの第二次グローバル・ブライトニング期では増加に転じた全天太陽放射と既に増加傾向にあった長波放射が相まって全放射の増加率は6.6Wm-2/decadeとなり, 年間0.035℃となる観測時代最大の気温上昇率をもたらす結果となる. このように現在進行中の温暖化は温室効果ガスの増加率とエアロゾルの増加率のバランスの微妙な崩れの結果であり, 近い将来においてもエアロゾルの増加率がある程度大きくなり温室効果の上昇率を越すことが生じれば, 寒冷化が起こりえる. 現に2000年代に入ってから温暖化が鈍っているのは, 決して温室効果が減少したためではなく, エアロゾルの効果が増加している結果である可能性が高い.
著者
中路 達郎
出版者
北海道大学低温科学研究所 = Institute of Low Temperature Science, Hokkaido University
雑誌
低温科学 (ISSN:18807593)
巻号頁・発行日
vol.67, pp.497-506, 2009-03-31

本節では,植物葉を対象とした分光特性研究の基礎的な知見と,野外における基本的な計測手法について解説し,葉内色素や光合成活性と関連した研究で用いられる評価指標(分光植生指標)について紹介する.
著者
石塚 量見 池内 昌彦
出版者
北海道大学低温科学研究所 = Institute of Low Temperature Science, Hokkaido University
雑誌
低温科学 (ISSN:18807593)
巻号頁・発行日
vol.67, pp.355-358, 2009-03-31

フィコビリンはシアノバクテリアや灰色藻,紅藻,クリプト藻などの真核藻類における主要な光合成の集光色素であり,タンパク質と共有結合している.本項では光合成色素としてのフィコビリンの性質,分析・単離法およびフィコビリタンパク質について述べる.
著者
横山 亜希子 滝 玲加 大鐘 由加子
出版者
北海道大学低温科学研究所 = Institute of Low Temperature Science, Hokkaido University
雑誌
低温科学 (ISSN:18807593)
巻号頁・発行日
vol.70, pp.67-73, 2012

尾瀬ヶ原にて5月の融雪時に雪の表面が赤褐色化する現象を地元の人はアカシボと呼んでいる. 尾瀬ヶ原は泥炭質で, 鉄はフミン質などと錯体を形成し, 地下水に溶存態鉄として豊富に含まれている. この溶存態鉄が酸化され懸濁態鉄になる過程がアカシボ現象に作用していると考えられる. このアカシボ現象を鉄・マンガン酸化細菌の面から解明することを目的とした. 室内実験にて, 鉄酸化細菌を20℃, 4℃, 0℃で培養し, 溶存態鉄の減少に伴い懸濁態鉄の増加, 溶存性有機物減少, 細菌数増加の経日変化がみられた. このことから雪や融雪中の低温環境においても鉄酸化細菌は強い酸化力をみせ, アカシボ現象の要因の一つであることが考えられた.Akashibo is a name people in the area use to describe a phenomenon by which the surface of snow acquires a reddish-brown-black color in the snowmelt in May of every year. People in the area call it Akashibo. Dissolved iron is richly contained in the groundwater of Ozegahara. Our objective was to explain this Akashibophenomenon by the contribution of the iron and manganese oxidation bacteria. From our laboratory experiments, iron oxdation bacteria were cultivated at 20 ℃, 4 ℃, and 0 ℃. As a result, the particulate iron and bacteria increased and the dissolved iron decreased with the decrease of the dissolved organic carbon. The Akashibo phenomenon is regarded as dependent on the involvement of the bacteria by which iron oxidation is actively carried out even at low temperatures.
著者
及川 真平
出版者
北海道大学低温科学研究所 = Institute of Low Temperature Science, Hokkaido University
雑誌
低温科学 (ISSN:18807593)
巻号頁・発行日
vol.67, pp.103-112, 2009-03-31

群落の構造(器官のサイズや位置)は群落内の環境(特に光強度)に強い影響を及ぼし,よって群落の生産を規定している.一方で,群落の構造は生産の影響を受ける.本稿では,こうした植物群落の構造と群落内部の光環境の関係を解析する手法を概説する.
著者
早坂 忠裕
出版者
北海道大学低温科学研究所 = Institute of Low Temperature Science, Hokkaido University
雑誌
低温科学 (ISSN:18807593)
巻号頁・発行日
vol.72, pp.145-150, 2014-03-31

雲の放射特性の基本的な要素について概要を解説する. 雲微物理特性と放射特性を結びつけるものは, 水や氷の複素屈折率と雲粒の粒径分布である. 水も氷も可視域においては光をほとんど吸収しない. その結果, 短波放射は, 雲が厚くなっても透過する. 一方, 赤外域においては吸収が強く, 雲水(氷)量が増加すると雲は黒体に近い振る舞いをする. これらの違いが温室効果あるいは日傘効果を卓越させる. 地球上の雲は,温室効果と日傘効果を合わせた結果として地表面を冷却するが, 大気による短波放射の吸収には,それほど寄与しない. また, 雲の形成・維持・消滅過程においては, 特に雲頂における長波放射の射出による冷却が重要である.
著者
蓮沼 誠久 原田 和生 三宅 親弘 福崎 英一郎
出版者
北海道大学低温科学研究所 = Institute of Low Temperature Science, Hokkaido University
雑誌
低温科学 (ISSN:18807593)
巻号頁・発行日
vol.67, pp.169-174, 2009-03-31

生体試料に含まれる代謝産物の量的情報をMSやNMRを利用して網羅的に解析する代謝プロファイリング技術は,微量な中間代謝物質を含む多様な化合物の一斉分析を可能にしたが,ここで得られる情報は代謝物質を抽出した時点での蓄積量のスナップショットであった.生体内で代謝物質が動的定常状態にある時,総量は変わらずに一定の同じ速度で分解と合成が行われて入れ替わっており,新規合成される物質の存在比率を知るためには安定同位体を用いたin vivo標識が必須である.代謝プロファイリングと安定同位体標識法の組合せを利用した「動的代謝プロファイリング」は,代謝産物の量的変動を網羅的に観測することを可能にする.植物の環境変化やストレスに対する応答はシステマティックな代謝変動に基づくことが予想され,「動的代謝プロファイリング」はこうした複雑な応答機構の解明に寄与することが期待できる.
著者
岩井 優和 皆川 純
出版者
北海道大学低温科学研究所 = Institute of Low Temperature Science, Hokkaido University
雑誌
低温科学 (ISSN:18807593)
巻号頁・発行日
vol.67, pp.385-386, 2009-03-31

光合成反応は,光化学系I,光化学系IIを始め,いくつものタンパク質複合体,あるいはタンパク質超複合体によって行われる.「ショ糖密度勾配超遠心法」は,これらの複合体を大きさによって分画する場合に広く用いられている.本項では,緑藻クラミドモナスの葉緑体上の光化学系複合体を例に取り,ショ糖密度勾配超遠心法のプロトコルを紹介する.
著者
岩渕 弘信
出版者
北海道大学低温科学研究所 = Institute of Low Temperature Science, Hokkaido University
雑誌
低温科学 (ISSN:18807593)
巻号頁・発行日
vol.72, pp.151-157, 2014

不均質な雲場における放射フラックスの空間分布は, 平行平板大気の放射フラックスの分布とは大きく異なる. 不均質雲場の放射の分布は, 雲が水平不均質であることによる影響と, 不均質媒体中での3次元放射伝達の影響を受ける. 本稿では, これらの効果について, これまでの研究からわかったことを概説する. 50~200kmの水平スケールの領域平均放射フラックスについては, 水平不均質性の効果を考えることで精度よく計算が可能となる. より小さい水平スケールでは放射の水平収束・発散が顕著になり, 局所的な放射フラックスは, 近傍の雲水の配置に強く影響されることが示される.Radiative flux distribution in inhomogeneous cloud field is largely different from that in the plane-parallel atmosphere. Horizontal inhomogeneity and three-dimensional radiative transfer in the inhomogeneous media affect radiation in inhomogeneous cloud field. In this review, current understandings about these effects are presented. Domain-average radiative fluxes over an area of 50-200 km horizontal scale can be accurately calculated by incorporating the effect of horizontal inhomogeneity in radiation scheme. On smaller horizontal scale, horizontal radiative convergence/divergence is apparent, and nearby spatial arrangement of cloud water should influence local radiative fluxes.
著者
中村 晃三
出版者
北海道大学低温科学研究所 = Institute of Low Temperature Science, Hokkaido University
雑誌
低温科学 (ISSN:18807593)
巻号頁・発行日
vol.72, pp.241-248, 2014

大気境界層内にできる層状雲は,長期間, 広い領域を覆うため, 地球の放射過程に大きな影響を及ぼす. そのような層状雲の生成, 維持, 消滅過程について, いくつかの興味深い研究について簡単に紹介する. 特に, エアロゾルは, 雲の生成過程において雲粒数密度など, そのミクロな特性に影響を与えるが, 雨への変換などその成長過程を通じ, 雲全体の光学的厚さ, 雲量, アルベドなど, そのマクロな特性にも大きな影響を与える. このとき, 条件によってエアロゾルの影響が異なった形で表れるというのが興味深い結果である. さらに, 消滅過程においても,エアロゾルの影響が関係していると考えられている. これらの研究について, 簡単に紹介した.The boundary layer clouds have large effects on the Earth radiation budget through their high reflection of solar radiation with significant and long coverage. This paper introduces some interesting studies about the formation, maintenance, and dissipation process of the boundary layer clouds. Especially, the impacts of aerosol on the formation process of the boundary layer clouds through the microphysical process are important. Its effects on the macroscopic characteristics of clouds, such as optical thickness, cloud amount and albedo, through the conversion process from cloud droplets to rain drops are large. One of the interesting results of the studies is that the increasing effect of aerosol number density on the macroscopic feature changes its sign by the condition of the rainfall. The aerosol has impacts not only on the formation process of the boundary layer clouds but also the dissipating process of the clouds.
著者
早坂 忠裕
出版者
北海道大学低温科学研究所 = Institute of Low Temperature Science, Hokkaido University
雑誌
低温科学 (ISSN:18807593)
巻号頁・発行日
vol.72, pp.145-150, 2014-03-31

雲の放射特性の基本的な要素について概要を解説する. 雲微物理特性と放射特性を結びつけるものは, 水や氷の複素屈折率と雲粒の粒径分布である. 水も氷も可視域においては光をほとんど吸収しない. その結果, 短波放射は, 雲が厚くなっても透過する. 一方, 赤外域においては吸収が強く, 雲水(氷)量が増加すると雲は黒体に近い振る舞いをする. これらの違いが温室効果あるいは日傘効果を卓越させる. 地球上の雲は,温室効果と日傘効果を合わせた結果として地表面を冷却するが, 大気による短波放射の吸収には,それほど寄与しない. また, 雲の形成・維持・消滅過程においては, 特に雲頂における長波放射の射出による冷却が重要である. The basic radiative properties are described in this paper. Refractive index of water and ice, and droplet size distribution play important roles in the relationship between microphysics and radiative properties of cloud. Water and ice are almost transparent for the radiation in visible region, and thus cloud transmits shortwave radiation even in a thick cloud. On the other hand, cloud easily becomes blackbody with increase in cloud water or ice content because of large absorptance of infrared radiation. These properties cause greenhouse effect and parasol effect, and cool the Earth’s surface as a result. However, cloud does not largely affect the absorption of shortwave radiation. Moreover, the longwave radiation at the cloud top is important for formation, maintenance, and dissipation od cloud.
著者
民秋 均 溝口 正
出版者
北海道大学低温科学研究所 = Institute of Low Temperature Science, Hokkaido University
雑誌
低温科学 (ISSN:18807593)
巻号頁・発行日
vol.67, pp.339-346, 2009-03-31

バクテリオクロロフィルは,光合成アンテナや反応中心において,光収穫・エネルギー伝達や電子移動を行う光応答性の色素分子である.本章では酸素非発生型光合成細菌からのバクテリオクロロフィルの抽出・分析方法について紹介する.
著者
園池 公毅
出版者
北海道大学低温科学研究所 = Institute of Low Temperature Science, Hokkaido University
雑誌
低温科学 (ISSN:18807593)
巻号頁・発行日
vol.67, pp.507-524, 2009-03-31

クロロフィル蛍光はその起源となる光化学系の種類や量,そしてエネルギー移動を反映するため,光化学系の量比やステート遷移に関する情報をそこから得ることができる.また,室温での蛍光測定にパルス変調測定法を適用することにより,植物の光合成の状態を非破壊的に測定することができる.この場合,クロロフィル蛍光自体は光化学系IIから発光するが,電子伝達の相互作用を通して,系II以外の光合成の状態に関する情報を蛍光から得ることもできる.本稿では,クロロフィル蛍光測定の原理と,測定結果を定量化する方法,そして結果として得られたパラメーターの解釈の方法について解説し,さらにパルス変調法の吸収測定への応用についても触れる.