著者
永尾 一平
出版者
日本エアロゾル学会
雑誌
エアロゾル研究 (ISSN:09122834)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.269-277, 2012 (Released:2013-01-18)
参考文献数
67

One hypothesis regarding global climate regulation by marine phytoplankton was proposed in 1987. This is called the CLAW hypothesis that describes the negative feedback loop through controlling the emission of biogenic sulfur compounds, dimethylsulfide (DMS) as responses to climate parameter changes such as solar radiation and sea surface temperature, resulting in controlling non sea-salt sulfate aerosols, cloud condensation nuclei (CCN) and cloud albedo, thus eventually mitigating the initial changes. However, verification of this hypothesis has not yet been concluded. This is mainly due to lack of our understandings both on the processes and responses described in this hypothesis, because of complexities in the processes of DMS production and loss in the seawater, and in those of aerosols and CCN formations in the atmosphere. In this paper, the progress of recent research on these processes and responses is briefly reviewed, and contribution of DMS to the climate regulation is discussed. Although research on climate regulation by DMS has not yet completed, on the basis of discussion with updated results, it can be concluded that this contribution is not sufficient to regulate the global climate.
著者
永尾 一平
出版者
北海道大学低温科学研究所 = Institute of Low Temperature Science, Hokkaido University
雑誌
低温科学 (ISSN:18807593)
巻号頁・発行日
vol.72, pp.1-14, 2014-03-31

海洋生物相により生成される硫化ジメチル(DMS)は, 大気中の酸化反応を経て雲凝結核(CCN)となる硫酸エアロゾル粒子を生成する. したがってDMS放出量変化は地球の放射収支に影響を与える可能性があり, 海洋生物圏と雲と気候のリンクに関する仮説(CLAW 仮説)が1987年に提示された. その後, この仮説の検証を通してDMSの研究が大い進展したが, このリンクの複雑さゆえに現時点でこの仮説の検証の最終的な結論はでていない. 本稿では, これまで行われた多くの研究成果をもとに, DMS研究の進展と現状について整理することを試みた. また, モデルを用いた将来の気候下でのDMSの応答に関する研究結果も取り上げ, DMSの気候調節の可能性を調べた.
著者
永尾 一平
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

海洋植物プランクトンが生成する硫化ジメチル(DMS)は、大気中で硫酸エアロゾルとなり、雲形成に不可欠な凝結核となる。このDMSの海洋から大気への放出量を渦相関法などにより正確に測定することが求められている。本研究は、観測船のフォアマストに設置可能な小型で、渦相関法で要求される高時間分解能でDMS濃度変動を測定するため、フッ素との化学蛍光反応を利用した装置から構成される測定システムを構築し、これらを観測船上に設置して北部北太平洋上でDMSフラックス測定を実施した。
著者
渡辺 幸一 永尾 一平 田中 浩
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.74, no.3, pp.393-398, 1996-06-25
被引用文献数
1

小笠原諸島母島において大気中のH_2O_2濃度やO_3濃度を1995年4月及び7月の2度にわたり測定した. 4月においては, 小笠原諸島が大陸性気団に覆われた時にO_3やH_2O_2が高濃度となった. 7月のO_3濃度は4月より低かったが, H_2O_2濃度の平均値は4月より高かった. これは, 日射量の違いによるものと考えられる. 過酸化水素濃度は通常, 日中に高く夜間に低くなったが, 相対湿度が比較的低い時には, H_2O_2濃度が夜間に増加する現象がしばしば観測された. 夜間におけるH_2O_2濃度の減少は相対湿度に強く依存していた. 海洋大気中では夜間におけるH_2O_2の消失は不均質過程 (heterogeneous process) によるものである. この消失割合 (loss rate) は, 0.3〜6.5×10^<-5> s^<-1>程度で, 相対湿度が高くなると大きくなることがわかった. このような過程は海洋大気中におけるHO_x濃度に重要な影響を与えているものと考えられる.