著者
石井 哲也 大津 珠子
出版者
北海道大学高等教育推進機構 高等教育研究部 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.59-71, 2014-06

胎児の染色体異常を検査とする無侵襲性出生前遺伝学的検査(NIPT)は,検査採血の容易さ,妊娠早期の検査実施,および高い信頼性により生殖の自己決定権を向上しうる.しかし,臨床的,倫理的,および社会的問題も同時にもたらした.我々はNIPTに関するサイエンスカフェを実施し,その結果を考察した. このカフェでは,参加者に生殖や先天異常の情報を提供するとともに,NIPTに対する様々な姿勢や関連法についても説明した.アンケート調査の結果,参加者のNIPT受容性は,受容可能(27%),どちらかというと受容可能(32%),どちらかというと受容不可能(14%),受容不可能(1%),回答不能(26%)となり,既報の世論調査と比較すると,一部参加者がより慎重な姿勢となった可能性が示唆された.また,一部参加者は遺伝的疾患や知能の検査へのNIPT利用を受容しうると回答した.NIPTの更なる利用拡大に先立ち,生殖の自己決定権のより倫理的な行使には社会教育の充実が不可欠であるが,サイエンスカフェは親密な雰囲気下での情報提供と参加者間コミュニケーションの促進が可能であることから,有効な社会教育の一つとなりうる.

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[障害][遺伝子診断][科学とテクノ][日本・社会][新優生思想]
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