- 著者
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石坂 昭雄
- 出版者
- 北海道大学大学院経済学研究科
- 雑誌
- 經濟學研究 (ISSN:04516265)
- 巻号頁・発行日
- vol.66, no.2, pp.91-130, 2016-12-08
ドイツ新歴史学派経済学の巨匠ルーヨ・ブレンターノは,経済理論や社会政策のみならず,経済史学においても大きな功績を遺したにもかかわらず,現在では内外ともにまったく忘れられ無視された存在となっている。その原因の一端は,彼が資本主義精神を最大限利潤の追求一般に帰し,かのマックス・ヴェーバーの『プロテスタンティズムの倫理と《資本主義の精神》」を最も早い時期から批判してきた代表者としてのみ理解されてきたところにある。しかし,ブレンターノは,当時のドイツの学界切ってのイギリス経済と経済史の専門家であり,かつその自由主義と社会改革の強固な信奉者であったし,ヴェーバーなど社会政策学会内の自由主義的改革派を率いる中心的リーダーでもあった。それゆえ,彼の資本主義精神の議論だけを捉えてブレンターノを評価するのは妥当ではない。
そこで本稿では,ブレンターノの経済史研究,とりわけイギリス経済史とヨーロッパ経済の発展にかんする全体像をとらえ,そのなかでのヴェーバーの「資本主義の『精神』」批判を検討しながら,その主張や歴史認識が,どこまでヴェーバーと重なり合うか,どの点で相互に大きく乖離することになったかを論じたい。